小規模自治体の挑戦:仕事と子育てを繋げる橋渡し。限られた資源で利用者のニーズに応える提供体制を追求

(写真:アフロ)

1.行政区を超える就業および子育ての連携

 「居住する場所はここ、近くの保育所に子を預け、隣の市まで通勤する」。行政区を超えて職場を往復しながら育児を行う子育て世帯。その数は決して少なくないであろう。夜間人口を常駐人口とした場合に、昼間人口との割合でみる指標。昼夜間人口比率で象徴される人口移動。就労支援サービスおよび子育てサービスを提供するのに、限られた行政資源のなかで、利用者のニーズに応じたサービスの提供とは、どういう仕組みが望ましいのだろうか。実際のサービス提供体制をつぶさに確認しながら考えていきたい。

子育てをするママ対象のマザーズコーナー

 仕事と子育ての両立は、1999年6月の女性の経済的自立が目的化された「男女共同参画社会基本法」に翻る。働きながら子育てをするために、就業および転職の支援を促す機関の一つにハローワークがある。ハローワークでは、仕事と子育ての両立が実現しやすいお仕事を紹介する。たとえば、残業がなく土・日・祝日の休みがとれる業務、勤務時間を柔軟に設定できるお仕事、経験や資格を不問とする就業先を伝えていく。

 兵庫県北部に位置するハローワーク豊岡。そこでは中学生未満の子をもつ母親に特化した就労支援サービスを行うマザーズコーナーが設置されている。まず総合受付で求職申込票およびハローワークカードを作成し、マザーズコーナーに誘導。そこで、プレ相談を行い、重点支援対象者を選定し、予約相談を行いつつ、支援対象者の就職に繋げていく。そして就職後も一定期間の経過に合わせて定着状況を確認していく。

就労サービスと子育てサービスの連携

 ハローワーク豊岡には、和田山分室、香住出張所、ならびに八鹿出張所のハローワークがあり、豊岡市、養父市、朝来市、香美町、新温泉町の子育て関係の機関と連携している。それら機関を介して、兵庫県北部の子育てサービスをキャッチし、就職情報に加えて、居住地および就業場所等も考慮した子育てサービスの関連情報も提供している。なかでも保育所、幼稚園ならびに認定子ども園そして放課後児童クラブの情報はニーズが高い。

 具体的には申し込み方法、保育時間、住所や電話番号に定員数に問い合わせ先などを伝える。公立保育所の保育時間一つとっても、開所時間だけでなく、保育短時間、保育標準時間そして延長時間は市町によって異なる。開所時間を比べると、7時30分から19時00分とする豊岡市と養父市、朝来市に対して、新温泉町は7時00分から19時00分、香美町は区によって異なる。香住区は7時00分から19時00分、村岡区は7時30分から18時30分、小代区は7時30分から18時00分と設定されている。仕事をしながら子を育てる親にとっては、この時間の違いは仕事を選択するときに大きい。

2.結婚、妊娠そして子育ての切れ目のないサポート体制

 ライフプランに刻まれる結婚、妊娠そして子育て等のステージ。そのステージごとに様々な悩みにぶつかる。その悩みを少しでも解消できればと、地域で身近に利用できるように様々なサービスを提供されている。実際に養父市では、切れ目のないサポート体制を構築している。たとえば、結婚し新たに住居を構えるときには住宅費や引っ越し費用が掛かる。その費用に対して「結婚新生活サポートアップ事業」で補助される。赤ちゃんが欲しい、だけど難しい。そのようなときのサポートとして、「特定不妊治療費助成」「不育症治療費助成」がある。

 そしてもし子を授かった場合に、妊娠も出産も安心して安全に迎えて欲しいという思いから、「妊婦健康診査費補助事業」「出産準備金助成事業」が用意されている。そのサポートは、下記の図で示すようにサービスに切れ目がない。続く、産前も産後もママと子を支える「たまひよサロン」がある。「産婦健康診査費助成事業」。そして子育て世帯の経済的負担軽減を図るために市独自の医療費助成。

図 結婚、妊娠そして子育ての切れ目のないサポート体制(平成29年4月時点)

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出典)養父市「養父市移住定住促進ガイドブック」より抜粋

仕事と子育ての両立へのサービス

 仕事と子育ての両立に対しても、早くから「認定子ども園」システムを取り込んできた。その運営形態は、保育所が1園に対し、認定こども園が11園であり、市立区分の8園と私立区分の3園で構成されている。そして「認定こども園・保育所の保育料負担軽減」を実施するとともに、忙しいママの時間の制約の緩和に繋がればと、子どもの送迎を支援する「認定こども園・保育所通園バス運行事業」、急な用事・通院に直面したときは「一時預かり事業」が提供されている。さらに、給食費の負担軽減、遠距離通学費の補助、そして大学等進学支援に通信制大学受講支援にまで至る充実ぶり。

官民連携の企業主導型保育事業

  ただサービスには財源が必要とされる。人であれ、建物であれ、サービスの提供にはコストがかかる。行政以外にも、ボランティアグループ、NPO団体、自治協議会、子ども園などが連携を取りながら、サービスの持続性も踏まえた提供体制が今後求められるであろう。保育所の経営にも民との連携を図ることもありうる。たとえば、一般事業主からの拠出のもと、整備費および運営費については一部助成を受けながら、企業が主導になって保育を運営する企業主導型保育事業がある。整備費および運営費の補助をうけつつ、複数の企業が共同で設置・利用を行い、働き方に応じた柔軟な保育サービスの提供体制のもと、地域の子どもも受け入れることができる仕組みを企業主導型保育事業はとっている。

 その設置には企業が単独で施設を設置・利用する単独設置型、1つまたは複数の企業が設置した施設を複数の企業が利用する共同設置・共同利用型、保育事業者が設置した施設を1つまたは複数の企業で共同利用する保育事業者設置型がある。すでに2016年の時点で871施設が実施し20,284人の定員がある。その一つに神姫バス会社が単独設置・共同利用型で実施する「ニコパらんど」がある。サービスの充実は、働きながら子育てをすることへの実現に繋がる。ただ将来的に人口減少を迎え財政的に制約がつきまとうことが予想されるなかで、今あるサービスをこの先も続けていく財政的視点も、自治体は求められているであろう。