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ヨーロッパで使用できない? ツイッターの競合「Threads」の出現、米主要紙はどう報じたか

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

米メタ(Meta)が今月5日にリリースした新SNSアプリ、Threads(スレッズ、スレッド)が話題だ。ThreadsはTwitter(ツイッター)のクローンと呼ばれるほど非常によく似ており、競合アプリであることは間違いない。

2社のお膝元であるアメリカで、主要メディアはThreadsの出現をどう見ているだろうか?

「Twitter殺しの新アプリ」しかしEUでは「利用不可」

5日付のニューヨークタイムズは、Threads, Instagram’s ‘Twitter Killer,’ Has Arrivedインスタグラムによる「ツイッターキラー」が登場)と題し、Threadsについて知っておくべきことや対抗馬であるTwitterとの相違点を説明している。

メタのマーク・ザッカーバーグCEOが「サービス開始から7時間で1000万人がユーザー登録した」と明かしているように、Threadsの利用者は凄まじい勢いで増えている。Twitterの現在のユーザー数は3億5,390万とされているが、ThreadsはTwitterが達成できていない10億以上のユーザーの獲得を目指すということだ。

ザッカーバーグ氏と、昨秋Twitterを買収したイーロン・マスク氏の対立構造は日に日に激化する中、同紙の記者はTwitterについてこのように述べている。

「マスク氏はアルゴリズムやそのほかの機能をいじったり、最近もアプリ使用時に閲覧できるツイート数に一時的な制限を課したりしてユーザーの怒りを買った」

「多くのテック企業はこのTwitterの混乱をうまく利用しようとしている」

メタはこれまで、TikTokなど他社アプリの機能の一部をクローンのように模倣してきた歴史がある。Reelsなどうまくいった例はあるが、Snapchatを真似たものなど注目されなかった試みもある。一方Threadsについて、同紙は「メタの豊富な資金源と世界中で20億以上の月間アクティブユーザーを持つインスタが支えとなり、優位に立っている」とした。

メタは同社が擁する各プラットフォームで、アプリごとではなくシームレスに動作できるようになるのが目標だという。一部の技術者はThreadsについて、Twitterキラー(ツイッター殺し)と呼ぶほどで、Twitterにとっては脅威だ。

ただしThreadsの利用は、EU(欧州連合)で制限されている。現在、アメリカや日本など世界100ヵ国のApp StoreとGoogle Playストアからダウンロードできる状態で、国の数は拡大予定だが、法律の関係で最大の市場の1つ、ヨーロッパで利用できないのは、メタにとって難儀だ。

「Twitterに取って代わるかもしれないが...」

5日付のワシントンポストは、Zuckerberg’s Twitter clone Threads is live. Here’s what you need to know.ザッカーバーグによるTwitterのクローン、Threadsが稼働。知っておくべきこと)という記事を発表。Threadsの登録者数がリリースの翌朝には3000万人となり、「億万長者のソーシャルメディアが大打撃を受けようとしている」と報じた。もちろんこれは、マスク氏のTwitterのことを指している。

Threadsの利点は、文字ベースの新たなソーシャルメディアを試したいインスタベースのクリエイターやインフルエンサーにとって、フォロワーをゼロから構築する作業が軽減できることだ。またThreadsにとってもっとも有利な点は、Instagramのユーザー数だ。TwitterのライバルとされるMastodonやBlueskyでさえユーザー数は1000万台に到達していないが、Instagramのユーザーは数十億規模だ。よって「ThreadsはTwitterに取って代わるかもしれない」と記者は述べている。

Threadsに「ない」ものもある。現時点ではDM機能がついていない。ハッシュタグやトレンドトピックの機能もなく、スレッドを投稿後の編集機能もない。フォローしているアカウントの投稿だけをスレッドに表示させる機能もなく、選択していないユーザーのスレッドを消去する方法もないという。

またThreadsには現時点で広告も掲載されていない。だが「これで安心、とはいかない」と記者は述べている。「ユーザーのオンライン行動を追跡し、それを利用してユーザーを広告のターゲットにすることで収益の大部分を稼いでいるメタであるから」。

さらに、InstagramのフォローをそのままThreadsに移行できるオプションについて、「素敵な写真を見たくてフォローしているアカウントと、政治やテレビの話題についての意見を読みたいと思っているアカウントが重なるかどうかは疑問」と分析している。

注意すべき点として、同紙もやはりThreadsがヨーロッパでローンチしていないことを挙げている。「今年5月にアイルランドデータ保護委員会が、プライバシー規則に違反したとして、メタ社に過去最高の12億ユーロ(約1880億円)の罰金を科した背景もある」。

Threadsのアカウントはいつでも非アクティブにできるが、アカウントを削除するには「連結しているインスタのアカウントを削除しなければできない」など、面倒な部分もある。

ThreadsはTwitterを凌駕するものになるだろうか?アメリカでも今後の行方に注目が集まっている。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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