Yahoo!ニュース

ソウル雑踏事故 米留学生2人も犠牲に。大規模なNYハロウィンイベント警戒高まる

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

韓国ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)での雑踏事故。死者154人(うち外国人26人)の中には日本人留学生2人に加え、駐韓国米国大使の発表で、少なくとも2人のアメリカ人留学生も犠牲になっていることがわかった。

ワシントンポストの報告によると、1人はジョージア州出身でケネソー州立大学の学生、スティーブン・ブレシ(Steven Blesi、20)さん。将来、国際ビジネスの分野で働くことを目指していたブレシさんは、大学生活の1学期を海外で学ぶことに充てたいと希望していたが、新型コロナの感染拡大で計画を2年延期し、この秋やっとその夢が叶ったばかりだった。

「(息子にとって)初の大冒険」(父親のコメント)だった海外での新生活は、今年8月に始まったばかりだった。ブレシさんは家族と頻繁にWhatsAppで連絡を取り合い、先週末父親に「中間試験が終わったので友人と遊びに行く予定」であると伝えていた。父は「気をつけてね。愛しているよ」と返信したが、それが息子との最後のテキストメッセージになった。

父は梨泰院での雑踏事故を知り、ブレシさんに何度も電話をかけたがブレシさんが電話に出ることはなかった。そのうち現地の警察が電話を取り、ブレシさんの携帯電話が事故現場から見つかったと伝えられた。

父親は、「どうして(現地当局は)群衆管理をしなかったのか理解できません」と答えた。

NPRによると、もう1人の犠牲者はケンタッキー大学の学生、アン・ギースキ(Anne Gieske)さん。ケンタッキー州出身のギースキさんは看護学を学ぶために、海外留学プログラムの一環として韓国に滞在していた。

日本人の犠牲者2人と同様に、彼らも留学生活を楽しみに渡韓した若者だった。

大規模ハロウィンイベント、本場NYでも高まる警戒感

コロナ禍を経て2021年、NYのハロウィンパレードには多数の人が集まった。
コロナ禍を経て2021年、NYのハロウィンパレードには多数の人が集まった。写真:ロイター/アフロ

ハロウィンパレードと言えば、ニューヨークが本場だ。当地では今年49回目を迎え、世界最大規模で開催されている。

さらに2ヵ月後には別の大規模イベント、大晦日のタイムズスクエア・カウントダウンも迫っており、ソウルでの大事故を受け、当地でも警戒が高まっている。

20年にわたりNYPD(ニューヨーク市警)で大規模イベントの安全管理に携わってきた専門家のホゼ・ディーガ氏は、NBCニュースに出演した。同氏によると「当地での大イベントでは人が密集しないオープンスペースがたくさん設けられ、いざとなったら逃げられるので、同様の事故が起こる可能性は低い」という。

しかし、昨年11月テキサス州ヒューストン市で開催された野外音楽フェスティバル「アストロワールド」で、ステージでパフォーマンスをしていたラッパー、トラヴィス・スコット氏が観客を煽ったとして、人々がステージ前に殺到し10人が死亡、300人以上が負傷する大事故が起こっている。

昨年、米テキサス州の音楽フェスで、観客殺到で多数の死傷者が出た。(ビデオ画像より)
昨年、米テキサス州の音楽フェスで、観客殺到で多数の死傷者が出た。(ビデオ画像より)提供:Courtesy of Twitter @ONACASELLA/ロイター/アフロ

ディーガ氏は、スタジアムやアリーナのような場所は、出入り口がたくさんあるものの間口は決して広くはないため、群衆が殺到した際には「注意が必要」だと警告する。

また、群衆の中で立ち往生してしまった場合の措置として覚えておくと良いこととして、以下の点を挙げた。

- 立ったままの姿勢をキープする。しゃがまない(万が一、携帯電話が落ちても拾おうとしない方が良いだろう)

-(壁など)動かないものに押さえつけられることを回避する

- いざとなったら群衆の流れに逆らわず、周囲の流れに身をまかせる

- 両腕を胸の前でしっかりと組み、呼吸のためのスペースを確保する

さらに、大イベントに行く際は、緊急時の出口や避難場所(人が密集しないオープンスペース、近くのホテルなど)はどこかを頭に入れておき、いざという場合に備えてシミュレーションしておくのが良さそうだ。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

安部かすみの最近の記事