Yahoo!ニュース

今週だけで一千億円! ゼレンスキー大統領の米議会演説後スピード発表の「莫大な追加支援」

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
写真は15日、ゼレンスキー大統領がカナダ連邦議会で行ったオンライン演説の様子。(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、アメリカの連邦議会でオンライン演説を行った。1日に欧州連合(EU)、8日にイギリス、15日にカナダの議会でもオンラインで演説をし、ウクライナへの更なる援助を求めてきた。日本の国会での演説も打診中であると伝えられている。

ゼレンスキー大統領は米連邦議会で、真珠湾攻撃(1941年)や同時多発テロ(2001年)といった過去にアメリカが受けた空からの壊滅的な攻撃を引用し、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定や、戦闘機の追加支援などを米国議会に求めた。

筆者によるオーサーコメント

またバイデン大統領に対しては「世界平和のリーダーになってほしい」と呼びかけた。

ホワイトハウスのプライベート・レジデンス(私邸)で演説を聞いていたというバイデン大統領は、演説から4時間後の同日午後1時過ぎより、記者団に対してこのように発表した。

「説得力のある重要な内容だった。情熱的なメッセージに感謝したい」

「世界はウクライナへの支援と、プーチンに多大なる代償を払わせるという決意で団結している」

バイデン大統領によると、アメリカがウクライナへの支援を開始したのは昨年3月。ロシア軍がウクライナ国境沿いで軍事演習を開始したため、6億5000万ドル(約773億円)分の対空装備を含む兵器などを支援した。この支援金額はかつてアメリカが提供してきたものをはるかに超えるものだ。「したがってロシアによる武力侵攻が始まった際、ウクライナはすでに対抗するために必要な武器を備えていた」と、バイデン大統領は述べた。

そして今年2月の戦争開始と共に、ウクライナが求める対空システムや輸送用ヘリコプターなどのため、3億5000万ドル(約416億円)分の追加支援を行ったことも明かした。「これらの支援によりウクライナ軍が、ロシア軍からの壊滅的な損失を(最小限に)防ぐことができた」

さらに今月12日、バイデン政権は2億ドル(約238億円)を承認したばかりだったが、今回のゼレンスキー大統領による演説後、8億ドル(約950億円)を新たに拠出するとした。つまり今週(の発表)だけでも、アメリカがウクライナに対して提供する安全保障支援装備への総額は、10億ドル(約1190億円)相当に上る。

また、ウクライナが求める武器や対空システムのほかに、3億ドル(約357億円)分の食料や水、医薬品などといった人道支援も行い、この数週間でウクライナと周辺諸国の人々に提供されてきたという。

バイデン大統領は、ゼレンスキー大統領が求めたウクライナ上空の飛行禁止区域の設定について言及しなかったものの、新たに拠出する支援には、空からの攻撃に対抗する800の対空システムなどが含まれており、「民間人を攻撃している戦闘機やヘリコプターを制御し、ウクライナの空域を守ることができる」と述べた。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

安部かすみの最近の記事