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NYで初の感染者、全米で死者6人 パニックで水や米の買い占め騒動に?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
世界中から観光客が集まるNYのタイムズスクエア。(写真:アフロ)

全米で死者6人に

3月1日、アメリカのワシントン州ではCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染により新たに40、70、80代の男女を含む4人が死亡し、全米の死者は6人となった。(Updated)

いずれも、同州シアトル市近郊のカークランド市にあるエバーグリーンヘルス医療センターで治療を受けていた。カークランド市の介護施設、ライフケアセンター・オブ・カークランドで多数のヒトヒト感染が懸念されており、感染はシアトル市やカークランド市を擁するキング郡やその北部スノホミッシュ郡まで広がっている(重篤患者を含む12人が病院で治療中、29人がウイルステスト結果待ち→27人が陽性判定)。同州の知事は2月29日、緊急事態宣言を出している。

NYで初の感染者

ニューヨークでは3月1日、初の新型コロナウイルス感染者が確認された。感染者は渡航先のイランから先週カップルでニューヨークに戻って来た医療従事者の39歳の女性で、市内マンハッタン区の病院で検査を受け陽性反応が出た。呼吸器症状がみられるものの重症ではなく、現在自宅で自ら隔離中という。カップルのもう1人も検査をし、検査結果は明らかになっていない。女性は帰国後、公共交通機関は利用していないということだ。

これを受け、アンドリュー・クオモ州知事は「いつ感染者が出てもおかしくないことは予想されていたので、これまで着々と準備を整えていた。感染が今後広がっていく恐れはあるが、過度の心配は必要ない」と市民に呼び掛けた。

ニューヨークのビル・デブラシオ市長も、「市の保健当局では数週間にわたって警戒状態にあり、十分に対応する準備ができている」と述べた。今後感染が広がった場合でも、隔離された状態の医療用ベッド約1200台を整える用意があるということだ。

Updated:3日、ウェストチェスター郡在住マンハッタンに勤務する50代男性が、2人目の感染者として発表されました)

ニューヨークでも買い占め問題?

新型コロナウイルス騒動で、日本ではマスクやアルコール消毒液の買い占めが発生。さらにはデマにより買い占め問題は、トイレットペーパー、オムツ、米などの食料品などさまざまなものまで波及している。そして品切れとなったものが、メルカリなどのオンライン上で高額転売されるなど社会問題になっている。

一方、筆者が住むアメリカ・ニューヨークではどうか?

3月2日付のニューヨークタイムズ紙は、「ウイルスへの警戒が高まっている市内ではこの週末、多くの店でマスク、アルコール消毒液、衛生商品、抗菌用のお手拭きなどが売り切れ状態となった」と報じた。マンハッタン区の薬局のオーナーは記事で「アマゾンでいくつかの商品を仕入れようとしたが、そこにもなかったりあったとしても驚くほど高額で販売されている」とコメントしている。

1日付のニューヨークポスト紙でも、「Panicked New York shoppers stock up at Costco amid coronavirus fears」(新型コロナウイルスの恐怖でパニックに陥ったニューヨーカーがコストコで買いだめ)とする記事と動画を発表。

記事では、パニック状態の人々(その多くはマスク着用)が1日、今後の自宅での隔離生活に備え、ブルックリンのコストコに詰めかけ、ボトル入りの水や米などを備蓄のために買いだめしたとある。店内スタッフによると、前日の土曜日からこのような状態で、倉庫からボトル水を商品棚にいくら補充しても、すぐになくなる状態という。

同記事では、「オレゴン州のコストコでもトイレットペーパーがすべて売り切れ、またワシントン州を含む西海岸やハワイでも入店に長蛇の列」とある。

実際、どうなの?

筆者は市内ブルックリン在住だ。確かにマスクは2月上旬ころからどこの薬局でも見かけなくなった。街中や電車内でマスクをしている人はほんの一部(筆者の感覚では0.5〜1%ほどの割合)なので、転売業者や医療関係者が買い占めているか、華僑が自身で使用したり中国の親戚に送るなどしているのかもしれない。

マスクはどこの薬局でも、2月上旬ごろから市内で売り切れ状態。(c) Kasumi Abe
マスクはどこの薬局でも、2月上旬ごろから市内で売り切れ状態。(c) Kasumi Abe

ただし上記2紙で伝えられているような商品不足は、今のところ実感がない(マスク以外)。

3月1日、2日とブルックリン区内の大型スーパーや薬局を見てまわったが、いずれの店にも、アルコール消毒液、抗菌用ジェルやお手拭き、水、米、トイレットペーパー、オムツ、これらすべてが潤沢に商品棚に並べられているのを確認した。人々が列をなしたり買いあさっているのも目にしていない。いたって日常の光景だ。

3月1日に撮影。(c) Kasumi Abe
3月1日に撮影。(c) Kasumi Abe

そして、マスクについても筆者はラッキーなことに、2月上旬の時点で薬局の倉庫に残っていた最後の1箱を購入することができている。また、価格はやや高いが、路上などでは現在このように販売されていたりもする。

路上でバラ売りされているマスク(2枚で5ドル=約500円)やアルコール消毒液(ハンドサニタイザー)。3月2日に撮影。
路上でバラ売りされているマスク(2枚で5ドル=約500円)やアルコール消毒液(ハンドサニタイザー)。3月2日に撮影。

買い占めNO! 米アマゾンが悪徳業者をいっせい削除

日本と同様に、アメリカでも新型コロナ関連で品切れとなったものが、オンライン上で高額販売されているケースが見られる。2月27日付のロイターは、「アマゾンで販売されているマスクや関連商品の一部は、価格が通常より3〜4倍跳ね上がっている」と指摘した。

しかしアマゾンでは先週より、悪徳業者をサイトから締め出すために、新型コロナ便乗商品を100万点以上も削除している。対象商品は、高値のマスク、病気を防御または治癒できると虚偽の効果を宣伝したものなどだ。

同社広報は、「我々は販売元に商品について正確な情報を提供することを要求しており、当社ポリシーに違反するものは削除する」との声明を出した。販売業者に警告した後、引き続き同社ポリシーに反した商品は1週間もしないうちに削除している。

(Some photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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