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クルーズ船がNJに寄港し中国人4人搬送も「低リスク?」 次の寄港地へ【新型肺炎】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
7日朝、ニュージャージー州の港に寄港したAnthem of the Seas号(写真:ロイター/アフロ)

香港で下船した乗客が元となり船内の61人に新型コロナウイルスが感染した、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。横浜港沖に停泊し続け、乗客やその家族からは不安の声が上がっており、アメリカでもニュースになっている。

速報では、現在船内で待機を続けるアメリカ人乗客428人について、今後アメリカ政府による本国への移送計画が上がっているという。

また、香港発横浜行きの別のクルーズ船「ウエステルダム」も、フィリピンなどを経由し8日に那覇港に寄る予定だったが、フィリピンや日本当局から入港の許可が下りず、現在沖縄の南方沖を漂流している状態だという。ウエステルダムの今後のスケジュールはいったん保留となっており、新たな運航計画がなされている最中であることが明らかになった。

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米クルーズ船からも4人を搬送(NJ)

2月7日朝、アメリカのロイヤル・カリビアンが運営する「アンセム・オブ・ザ・シーズ」号は、マンハッタン南方に位置するニュージャージー州ベイヨン市の港に停泊した。CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が、中国国籍の27人(いずれも武漢出身ではない)の乗客のウイルス検査を行った結果、「さらなる検査のため」として4人の乗客を病院に搬送した。(うち1人に発熱の症状がみられたが、現在は解熱している)

このクルーズ船は12日間にわたって、カリブ諸国のプエルトリコやアンティグア島などを周り、この日のニュージャージーへの寄港は予定通りだった。定員は乗員1500人、乗客4900人とされており、何人がこのクルーズ船に乗ってやって来たかは明らかにされていないが、ウイルス検査が行われた27人以外は下船が許可された。

ニュージャージー州内では新型コロナウイルスの感染者はこれまで確認されておらず、「住民へのリスクは依然として低い」とフィル・マーフィー州知事はコメントしている。

CNNが報じたところによると、コネチカット州からクルーズに参加した乗客のコメントとして、クルーズ船から乗客へは何のアナウンスもなく、7日朝にテレビを観て初めて、27人の検査や4人の搬送を知ったという。

ロイヤル・カリビアンは「クルーズ船内の乗客のスクリーニングに注力し、衛生管理を徹底していく」と発表し、予定では同日午後4時に再出航予定だったのを1日延期し、翌8日に出航するという。

Updated: その後8日の出航予定が1日延期、またさらに1日延期となり、搬送された人々のウイルステスト結果が出るまで、アンセム・オブ・ザ・シーズ号の運航は一時見合わせとなっていることが報道でわかりました。乗客からは「ではなぜほかの乗客は下船が許されたのか?」と不安の声が上がっています。

  • その後2月12日現在、再出航した模様です。
カリブ海を航海するクルーズ船内のイメージ写真(Image: Pixabay by MustangJoe)
カリブ海を航海するクルーズ船内のイメージ写真(Image: Pixabay by MustangJoe)

欧米クルーズ船の水際対策

ロイヤル・カリビアンは3月4日まで、8隻の中国行きを欠航にしている。同社と、カーニバル・コーポレーションは新型肺炎騒動後、過去14日間、MSCクルーズ(スイス)は過去30日間、中国本土、香港、マカオに滞在した乗客乗員を下船させ、新たな乗船も拒否している。

また、乗客の検疫において、ロイヤル・カリビアンは、中国本土、香港、マカオのパスポート保有者全員に追加のスクリーニングを課しているほか、過去15日間にこれらの地域を訪れた人、インフルエンザに似た症状のある人、さらに接触者も厳しい検疫下に置いている。

富裕層ファミリーや、中でもリタイア後の余暇を楽しむ高齢カップルを中心に大人気の豪華絢爛クルーズ旅行。クルーズ・ラインズ国際協会によると、今年だけでも世界中で3,000万人以上の人々がクルーズ旅行を楽しむと見込まれていたほどだが、新型コロナ騒動で乗客は以前のような優雅な気持ちで心から楽しめない状況にあるのかもしれない。

病院に搬送された以外の23人も下船させられており、州内のニューアーク国際空港から中国に送還されるとみられている。

アメリカ〜カリブ諸国のクルーズ船は今のところ「監獄」状態ではないものの、乗客へのアナウンス不足や船内での状況、搬送された乗客のその後の症状が気になるところだ。「リスクは低い」とする知事の言葉を信じたい。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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