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ウクライナ機「イランが誤って撃墜」と米当局、「トランプのせい」と人々(地上の墜落衝撃映像も)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
墜落事故現場の様子。(写真:ロイター/アフロ)

イランで8日午前6時すぎ、首都テヘランのエマーム・ホメイニー空港を離陸した直後のウクライナ航空機が墜落し、乗員乗客176人全員が死亡した。「フライトレーダー24」のデータでは、機体は通常通り離陸し、順調に高度を上げていったが、途中でUターンし、高度2,400メートル付近で記録が途絶えたという。

この墜落事故は、アメリカとイランの2国間で緊張が高まる中で起きた。3日、アメリカ軍がイラク・バグダッドでイラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害した後、イランがその報復として7日、イラクに駐留する米軍基地2ヵ所を弾道ミサイルで攻撃した、その後だった。

【閲覧注意】

映像(1)

地上の監視カメラで撮影された、事故当時の衝撃映像

映像(2)

事故当時の上空の映像(出典:ニューヨークタイムズ)

当初は、墜落事故と2国間の対立を関連づける証拠はないとみられていたが、アメリカ連邦航空局は、イランによるミサイル攻撃後、米民間航空機に対して、イラン、イラク、オマーン湾、ペルシャ湾上空の運航を禁止していた。

さらに9日になり、米当局が高官の証言として「墜落事故はイランによる誤りだったとしてほぼ間違いない」と発表。「ウクライナ機は撃墜されたと、米当局は『確信』」(ニューヨークタイムズ紙)、「イランのミサイルシステムが『間違って』ウクライナ機を撃ち落とした」(ニューズウィーク紙)と、米主要メディアが次々に報じた。

アメリカ国防総省のシニア高官2人がニューズウィーク紙に語った証言により、事故機のボーイング737-800は、イラン軍によるロシア製地対空ミサイルTor-M1によって撃墜されたとみられている。機体が墜落したのが米軍基地2ヵ所で計22発の弾道ミサイル攻撃の4時間後で、現場の攻撃体制は「活発だった(警戒が高まっていた)」とした。また、アメリカ情報機関は当時、ミサイルのレーダー信号を感知しており、事故現場には機体の残骸と共にミサイルの破片も落ちていたことなどから、そのように結論づけた。

これを受けトランプ大統領は9日、「(ミスへの)疑念はある。あるけれど、ほかの人も疑いを持っているだろうから、そういうことは言いたくない。これは悲劇的な出来事だ。誰でも間違いは起こし得るだろうから...混沌としたエリアを飛行していたのだし。メカニカルな問題が墜落原因と言う人もいるが、私はそうは思わない、個人的に」と、珍しく茶を濁すようなソフトな口調で報道陣にコメントした。

一部のツイッターユーザーからは、「墜落はトランプのせいだ」「イランに対する失態がトランプのせいだとされるまでに、一体どのくらいの時間がかかるのか」と、憤りの声も上がっている。

イランのメディアでは、事故原因を「機体は離陸直後に空港に引き返しており、墜落はエンジントラブルなどメカニカルや技術的な問題」と、事故直後のまだ十分な調査がなされる前からそのように報じるなど、不可解な点もみられていた。イラン当局側は、事故機から回収したブラックボックスをアメリカ側に渡すつもりはないと発表している。このまま事故原因(真実)は闇に葬り去られるのだろうか。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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