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ビヨンセの父親も!米男性の乳がん患者増加で年間2千人超え 日本は?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ビヨンセと父親のマシュー・ノウルズさん(写真:Shutterstock/アフロ)

歌手ビヨンセの父親、マシュー・ノウルズ(Mathew Knowles)さん(67歳)が、乳がんと診断され手術を受けたことが、朝の情報番組『Good Morning America』で明らかになった。

マシューさんのインタビュー

このインタビューによると、マシューさんは乳房に痛みなどはなかったものの、4〜5日間にわたってシャツやベッドシーツに血液が小さい水玉のように付着したことで不審に思い、マンモグラフィ検査を受け、ステージ1Aの乳がんにかかっていることがわかった。7月に除去手術を受け、術後の経過は良好だという。

ゼロックスの元営業マンだったマシューさんは、デスティニーズ・チャイルド結成の際、ビヨンセなどのメンバーを集結させた俊敏マネージャーとして一躍有名になった。グループ解散後も2011年までビヨンセのマネージャーを務め上げ、現在も音楽プロデューサーなどとして活動している。ビヨンセやソランジュといった世界的な大物ミュージシャンを育て上げた1人の父親としても脚光を浴びた。

マシューさんは「乳がんというと男性は特に恥ずかしがる傾向にあるし、『なぜ自分が?』と自分も最初は大きなショックを受けた」と振り返りながら、早期発見の重要性を強調した。マシューさんは2つ目の乳房についても予防のために、来年早々に切除する予定があると語った。TMZ記事

米男性の乳がん患者、年間2千人超え

Cancer.netによると、アメリカでは女性のがん患者数は皮膚がんと乳がんがもっとも多く、乳がんと診断された女性は、現在300万人以上。

今年だけでも、26万8,600人の女性が浸潤性乳がん(腫瘍が乳房内の発生部位から周囲の組織へ拡がった症状)、6万2,930人の女性が上皮内乳がん(腫瘍が上皮=粘膜層内に留まっている状態)と、それぞれ診断されている。

一方、今年乳がんと診断された男性は2,670人。女性に比べるとかなり少ないが、人数自体は決して少ないとは言えない。

アメリカでは1989年以降、早期発見と治療の向上により、乳がんによる死者数は減少しているが、それでも乳がんが起因の死亡は肺がんに続く多さだという。

その中で、今年だけでも4万1,760人の女性と500人の男性が、乳がんによって命を落とすのではないかと、Cancer.netは見ている。

Cancer Treatment Centers of Americaによると、乳がんにかかるアメリカ人男性は60〜70歳が多いということだ。「主にホルモンの変化による10代、および高齢の男性によく見られる男性の乳房障害である女性化乳房も、乳頭や乳輪の下で腫瘍の成長を引き起こすこともあるため、注視する必要がある」とも警告している。

日本人男性の乳がん患者数は?

一方日本の状況はどうであろうか?

ワコールによると、女性が患うがんの中で乳がんが一番多く、増加傾向にあるという。2005年は3万1,174人だったが、2015年は8万9,400人と3倍近くに増加。乳がんで命を落としているのは年間1万4,000人で、女性の死亡原因の1位になっている。

日本乳癌学会に登録があった情報によると、乳がんと診断された8万7,000人のうち、男性は1%未満の560人だったそう(2015年)。

(日本)男性乳がんの会「メンズBC」が開設

男性乳がん患者の集まり「メンズBC」(運営:キャンサーネットジャパン)は、東京から遠方に住む患者のために、10月1日に新たにウェブサイトを開設した。日本でも男性乳がん患者の増加に伴い、このような会がますます盛んになり、患者の心の拠り所になるだろう。

10月は乳がん月間だ。あちらこちらにピンクリボンが見えてくる。

今回ビヨンセの父親といった社会的に影響力のある人物が乳がんを患い、病魔を克服したことで、もはや男性も乳がんは人ごとではないという注意喚起になったのではないだろうか。

日本はまだアメリカに比べれば乳がんは少ない方だが、食の欧米化やそのほかの要因で男女共に増加傾向にある。もはや対岸の火事とは言えないのだ。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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