人生を棒に振ってもいいくらいの気持ちがちょうどいい 禅僧が永平寺の修行で積み重ねた結論は
その証拠に、赤ちゃんは人の手を借りなければ、絶対に生き延びることはできません。人生の始まりからして、われわれは他人の存在によって生き延びてきました。それを思い出せば、「こうあらねば」とむやみに力を入れて生きることの不自然さがわかるでしょう。 ■自分を追い込まない もともと人間は受け身の存在なのに、何かに駆り立てられるように積極的に生きるのは無理なのです。それでも無理をしないと生きられないのだとしたら、自分を追い込まない「無理の仕方」があるだけです。 しかし本当のことを言えば、無理をすることもない。たいていのことはやり過ごしてもいい話なのです。乱暴なことを言うと思うかもしれません。でも死ぬ間際になれば、大したことは残っていません。今ジタバタしている問題について、思い出したりもしないでしょう。 人生の最後に一生を振り返ったとき、おそらく、「多少の満足」と「いくつかの後悔」が残るのが普通です。多くの方を弔ってきて、そう実感します。けれど、それでいいのです。 人生を〝棒に振る〟くらいの気持ちで生きれば、ちょうどいいのです。 すると、ラクに生きられます。 そして、ラクに死ぬことができます。
南直哉