24時間ゲーム漬けの不登校息子が「明日こそ学校に行く」と親を喜ばす深層心理
朝、起きられなくなった息子
イクコさんのひとり息子リョウトくんの様子が変わったのは、小学6年生の夏休み明け9月から。不登校の助走期間の始まりだった。 朝から「調子が悪い」と言って起きられなくなった。リョウトくんはゲーム好きだったが、夜11時には寝室の電気を消し就寝していたはずだ。ところが朝起きられない。急がないと間に合わないので朝ごはんも食べずに登校した。何とか遅刻せずに間に合っていたが、10月からは始業時間に遅れるようになった。5分遅れが10分になり、20分にと遅れる幅が徐々に大きくなる。そのうち昼から登校する日も出てきた。 11月。ついに起こしても起きなくなった。 「私自身、すごく動揺しました。低学年のころ1、2回は行き渋ることもありましたが、そんなん言わんと行っておいでと励ませば学校に行きましたから。不登校の子どもが増えているというニュースなどを聞いてはいたけれど、私からすると『ああ、そういう子もいるねんなあ』くらい。どちらかといえば他人事ごとっていう感じ。別世界の話でした」 4年前の出来事をそう振り返る母イクコさんは「子どもが学校を休むなら例えば発熱とか何か理由があるとしか思えなかった」と言う。熱を測ったがまったくの平熱だ。翌日も、その翌日も起きられない。そこで、学校を休むのであれば体の不具合を見つけなくてはと、すぐに行きつけの小児科に連れて行った。 息子の胸や腹に聴診器を当てた医師は「お腹の調子がおかしいんじゃない?」と言う。便秘気味なせいで調子が出ないのではないか――それが最初の見立てだった。
学校に行かせるのは親の責務?
弱めの下剤を服用して便秘は治った。が、やはり起きられない。そこで同じ小児科を再び受診することにした。病院は予約制のため、その時間に到着しなくてはいけない。それなのに家を出る時間になっても、ゲームをやめなかった。イクコさんが「もうゲームやめて! もう行かなきゃ!」とゲーム機を取り上げたら、2階の窓から逃げようとした。夫が必死に体をつかまえ説得し、連れて行った。 「先生、ここに来るまでもすごく大変だったんです」と2階から逃げようとしたことを伝えたら、医師は「起立性調整障害かもしれんけど……」と言う。なるほど、朝弱くて起きられないのに、夜になったらどんどん元気になっておしゃべりが止まらなくなる。朝は真っ青な顔で起きてきたことなどを伝えると「池添先生っていうすごくいい先生がいるから、一度そこに相談してみたら?」と福祉広場を紹介してくれた。 夫とともに会いに行くと、こう言われた。 ――今はじっくり休むときや。行かせようとしたらあかんし、行くとか行かないとか話題にするのもあかん。とにかく本人がしたいっていうことを認めてあげて―― これに対し、イクコさんは「これでいいのかなっていうのはずっとありました」と吐露する。なぜならば「学校に行けるようにしてあげるのが親の責務みたいに感じていた」(イクコさん)からだ。 筆者のインタビューの際、当初は「学校に行けとは言っていない」と話したものの、当時相談の際に持参していたノートを開くと「行かせようとしてはいけない、と先生に言われた」とあった。イクコさんは「私、学校に行かそうとしていましたね」と正直に話してくれた。