なぜ桐生祥秀は男子100mで6年ぶりの日本一を手にすることができたのか…プロ意識が生んだ小さな進化
日本陸上競技選手権の男子100m決勝が2日、新潟の新潟デンカビッグスワンスタジアムで行われ、桐生祥秀(日本生命)が10秒27(-0.2)で6年ぶりの優勝を飾った。前半は多田修平(住友電工)が凄まじい飛び出しを見せるも、桐生は動じない。中盤から伸びてくると、終盤はケンブリッジ飛鳥(ナイキ)、小池祐貴(住友電工)らと競り合い、大接戦を制した。 2位のケンブリッジとは0秒01差。桐生はスリリングなレースで強さを発揮した。 「勝負弱い」と言われてきた男の大変身。レース直後のインタビューでは、「まずは6年ぶりに優勝できて良かった。新潟がいい思い出になりました。タイムは良くなかったですけど、来年(の日本選手権に)戻ってくる時はいいタイムで帰ってきたい。決勝は流れ関係なく勝ちきることが大事ですから」と笑顔を見せた。 高校3年時(13年)の4月に衝撃的な10秒01というタイムを叩き出してから7年。桐生は日本スプリント界の”希望の星”であり続けた。 日本選手権では毎年、優勝候補の一角に挙げられてきた。しかし、勝てたのは2014年大会の一度だけ。「ずっと注目してもらってきたなかで、5年間も勝てなかった。そういう面でも今回勝てたのは良かったなと思います。たぶん、僕以上に、土江(寛裕)先生、小島(茂之)コーチ、後藤(勤)トレーナーはプレッシャーがあったと思う。今回は恩返しじゃないですけどメダルを渡したいと思います」と感謝の言葉を述べた。 桐生の登場で、男子100mの注目度は格段にアップした。そのなかで桐生は真っ先に9秒台の世界へ突入。現在、日本人の9秒台は3人に増えて、9秒台に接近するスプリンターも続々と登場している。群雄割拠といえるほど日本の男子100mはハイレベルになった。 桐生は6年前の日本選手権を10秒22(+0.6)で初優勝。東洋大1年生のときになる。当時決勝に進出した8人のなかで桐生は最年少だった。他の7人で今回、決勝の舞台に立った者はいない。