ウクライナ待望の「F-16」の使い道は米大統領選の行方にかかっている!? 識者が語る徹底運用シミュレーション
そんな状況のウクライナだが、地上戦はどうなっているのか。元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)に聞いた。 「地上戦では自軍が占領した場所は自国の領土になります。それが基本です。当然、和平交渉でも占領した場所は『ここは我々の領土だから下がれ』と主張できます。 いまの露軍の攻め方は、兵士の練度不足で損害は増えるものの占領地は拡大するという方法です。これは和平交渉が行われるまでに、できる限り占領地を確保したい、その1点に尽きます。兵士を前に出して占領したところが領土となるからです」(二見氏) その露軍の攻撃に対して、ウ軍は供与されたF-16をどこで活用するのが効果的なのか。 「東部戦線ですね。露軍は射程70kmから最前線に1.5t誘導滑空爆弾を投下しています。普通の砲撃ならば地下壕で防げるのですが、1.5t滑空爆弾が着弾すると地下にいても地下壕ごと吹き飛ばされてしまいます。そして、その補充のために予備兵力を使用してしまい枯渇していきます。 すると、ウ軍の予備兵力がなくなり、損害を受けた部隊や、疲弊した部隊の部隊交代ができず、その弱点を突かれ露軍に占領されてしまいます。まずロシアの滑空爆弾を東部のウ軍最前線の真上に落させないことが重要になります」(二見氏) 8月8日の報道によると、ウ軍はロストフ州の露空軍モロヅフスク基地をドローンで攻撃。戦闘爆撃機Su34を1機破壊、2機損傷させた。また、倉庫に備蓄された滑空爆弾を爆破、破壊している。さらに、リペツク州の飛行場もドローンで攻撃。滑空誘導爆弾700発を貯蔵していた倉庫を破壊した。 「ウ軍の陣地防御にとって、滑空爆弾は相当厄介な代物なのです。しかし、その滑空爆弾を搭載するSu34を撃墜する術がないため、ウ軍最前線の防衛陣地に対して滑空爆弾が襲いかかり続け、占領地を拡大されています」(二見氏) 露空軍のSu34をウ軍はF-16で何とかしないとならない。前出の杉山氏はこう話す。 「東部戦線で1.5トンのUMPK-1500滑空誘導爆弾を運用するSu34を阻止する。それがひとつのポイントになるということですね。 ならば、F-16はアムラームを2発搭載して飛ぶはずです。ということは、お披露目で見せた2機編隊ではなく、単機運用になると思います」(杉山氏) 具体的にその運用はどうなるのだろう? 「先ほど組織戦闘ができないとヤクザみたいな使い方をすると話しましたよね。それは何かのミッションというより、単機で賭けのような任務に入るというイメージだったので、その言葉を使いました。 しかし、Su34阻止のための単機運用であれば、話は変わってきます。F-16が空中で高高度を旋回しながらSu34を待ち受ける形をとると、継続的に待ち受ける機数の余裕はなく、また露軍に発見されやすくなります。だから、超低空を高速で飛行するワンショットの形を取ります。 具体的には、まず露空軍基地からSu34が離陸した情報が入ると同時に、F-16が単機でアムラーム2発を搭載してスクランブルで離陸します。上空の敵機はレーダーで見つけやすいので、東部戦線の向こうにいるSu34を発見できます。 そして、一気にポップアップしてアムラームを2発撃つ。ミサイルは撃ちっ放しだから、そのまま反転して低空で帰る。そんなミッションになるでしょうね。 だから、このミッションでは限定した形で、地上戦のために滑空誘導爆弾を落すSu34を徹底的に撃墜する。そこに絞り込んでミッションに従事する。地上では、Su34が飛んで行くのを確認するメンバー、そしてその戦果を確認するメンバーがいる。なので言い方としては『ホームラン狙いの打席』ですね。ただ、打率は高いと思いますよ」(杉山氏) このF-16の単機運用はゼレンスキー大統領の言葉とも符号する。