ウクライナ待望の「F-16」の使い道は米大統領選の行方にかかっている!? 識者が語る徹底運用シミュレーション
さらに、元航空自衛隊那覇基地302飛行隊隊長の杉山政樹氏(元空将補)はこう話す。 「私が常に言う『組織戦闘能力を持った形』をウクライナ空軍(以下、ウ空軍)のF-16がとれるかどうかを考えると、どうみてもこの先の世代になります。 いままでウ空軍は、どちらかというと組織戦闘ではなく、パイロット個人の技量で色んなミッションを成功させてきた。では、今回のF-16でどんなミッションがあるかと言うと、ゼレンスキー大統領の言葉の中に出てきた『防空作戦』です。 今回、F-16用に米国から支援される武器パッケージの中には、以前から供与されているHARM対レーダーミサイル『AGM-88』と、精密誘導爆弾JDAMキットがあります。それから、短射程ミサイル『サイドワインダー9X』、中距離空対空ミサイル『AMRAAM(アムラーム)』(射程180km)が新装備として供与されました。 これらの武装から推定するに、このパイロットたちは機種転換課程で、空対空戦闘訓練をかなり積んできたはずです。だからゼレンスキー大統領は、戦闘機を含めた防空能力を強化する、と言及したんだと思います」(杉山氏) 報道陣を前に、2機のF-16がゼレンスキー大統領の頭上をフライバイ(低空飛行)するデモンストレーションが行なわれた。しかし、プロの戦闘機乗りが見ると、分かってくることがある。 「機種転換課程のメンバーでも優秀な人を選んでいるのでしょうけど、転換訓練が終わってすぐに、低高度での2機編隊という難しい飛行を見せています。 2機編隊の2番機は、飛行指揮官を保護・支援する『ウイングマン』です。なので、一番楽な形の2機編隊でしたが、1番機のバックミラーに見える位置でウロウロと飛んでいました。その飛行を見る限り、2番機の技量はそんなにないのでは?と思いました。1番機は非常に高いレベルの人間ですが、2番機は下手でしたね。 また、今回の飛行は『F-16は2機編隊で運用する』という姿勢を見せていたことになります。しかし、ウ空軍が近代的な組織戦闘のできる空軍を目指すならば、20~40機の機数が揃うのを待つ必要がある。それができないならば、鉄砲玉のようなヤクザみたいな使い方をするでしょうね」(杉山氏) 「それができない時」とは、戦争の行方次第ということだ。どの報道においても、ウクライナがF-16の導入によって戦局を打開するのは難しいとされている。そのうえ、そのウクライナ戦争の行く末に、さらなる困難さが現れようとしている。 ゼレンスキー大統領は領土を放棄して戦争を終息させることに「最善の選択ではない」、「そのためには国民が望まなければいけない」と発言している。しかし、問題はトランプ前米大統領の動きだ。 ゼレンスキー大統領と電話会談した後、トランプ前米大統領は自分が大統領になった際には「世界に平和をもたらし、多くの命を奪った戦争を終わらせる」とSNSに投稿。つまり、もし選挙でトランプが勝てば、この戦争は終わりとなる。終わりが見えれば、武器は、"ヤクザな使い方"となる。