11年ぶり倒産1万件超えへ 支援担う銀行、失った再生ノウハウ求め連携加速
企業倒産が急増している。東京商工リサーチによると、2023年の倒産(負債総額1000万円以上)は8690件(前年比35%増)に達し、バブル崩壊後最も高い増加率となった。24年は13年以来、11年ぶりに1万件を突破する勢いだ。 【関連画像】リーマン・ショック以降、倒産企業数は減少していたが、23年に件数が急増した 背景には、新型コロナウイルス禍の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化している状況がある。国内の倒産件数はリーマン・ショックが起きた08年に1万5000件を超えたのをピークに、減少傾向にあった。金融政策の緩和により低金利環境下に置かれ、大きな変化のない、なぎの状態が長く続いていた。 コロナ禍に加え、物価高や人手不足が追い打ちをかけた。倒産件数だけをみれば、11年前の水準に戻ったかのようにみえるが、異なる点がある。22年4月に中小企業が法的手続きを経ずに債務整理を行うための「中小企業の事業再生等に関するガイドライン(中小企業版私的整理ガイドライン)」の運用が開始。「統計にはあらわれない私的整理の件数もかなり増えている」と銀行関係者は語る。 今後、金利上昇や年金改革による負担増も待ち受ける。中小企業は淘汰・選別の最終コーナーを迎えつつある。 ●銀行が悩む人材難 企業再生のニーズが高まる一方で、ある地方銀行関係者は不安を漏らす。「企業再生のノウハウを持った人材が銀行内にもうほとんどいない」 バブル崩壊やリーマン・ショックに見舞われた“平成時代”には、銀行は企業再生に相当数の人材を投入していた。その後、事業環境が落ち着き、再生案件は減少。担当者の高齢化が進み、すでに退職している人も多い。 企業再生では財務や法務の知識、事業そのものに対する理解など、専門的な知見とそれらを束ねる総合力が求められる。その実務経験やノウハウが十分に継承されておらず、それが銀行にとって成長の足かせとなりつつある。 日銀が8月に政策金利を引き上げ日本は再び「金利ある世界」に突入。銀行経営にとって潮目が大きく変化した。日本総合研究所の大嶋秀雄氏は、低金利環境下では、銀行は利ざやを削って貸出残高を増やす「薄利多売」が続いていたと指摘する。 金利ある世界になり、これからは銀行も金利引き上げが可能になるが、経営の伴走支援などその金利に見合う価値を顧客企業に示せるかが問われる。「貸出ビジネスの付加価値が収益力の差につながる」(大嶋氏)という。 さらに今春、金融庁は金融機関向けの監督指針を改正。企業再生の需要の高まりを見据え、企業の資金繰りへの協力だけでなく経営改善・再生支援に重点を置くことを求めた。