11年ぶり倒産1万件超えへ 支援担う銀行、失った再生ノウハウ求め連携加速
鍵は「連携」にあり
再生支援に向けて各行が強化しているのが、外部機関との連携だ。 例えば、地銀では債権回収会社(サービサー)を設立する動きが増えている。東京きらぼしフィナンシャルグループ(FG)傘下のきらぼし銀行は22年にエイチ・エス債権回収を完全子会社化し、債権管理や不良債権処理など専門性の高い業務を取り込み、再生支援の幅を広げている。 8月、ゆうちょ銀行は事業再生に強い投資ファンドのジェイ・ウィル・グループと共同出資で、再生支援ファンドを立ち上げた。まずはゆうちょ銀から数人を出向させ、職場内訓練(OJT)の形で再生支援のノウハウを学ぶ。 りそなホールディングス(HD)は傘下のりそな銀行で、企業再生を担う「成長戦略室」の人員増強を進めている。専門人材の中途採用も合わせて、機能強化を加速させる方針だ。成長戦略室のメンバーは、各支店の融資担当者などを「トレーニー」として支援現場に同行させ、経験を積んでもらっている。山口裕貴室長は「顧客企業に寄り添い困り事を解決する上で、専門知識と現場経験を併せ持つ人材が不可欠」と語る。顧客対応の前線で支援能力を引き上げ、“選ばれる銀行”を目指す。 企業再生に携わってきた銀行OBが体制整備を手助けする例も現れた。ブライトン・ジャパン(東京・港)代表の澤田渉氏は、三井住友銀行で長年企業再生を担った経験を生かし、23年に窮境に陥った企業を支援するファンドを立ち上げた。 融資や経営再建を一気通貫で行うだけでなく、地域金融機関との協業にも意欲を示す。澤田氏は「これからはオールジャパンで、地域の垣根を越えて、同業の再編なども絡めた再生支援を進めていく必要がある」とし、地銀がその要になるという。 地銀は地元企業の再生支援をする際に、M&A(合併・買収)や事業・資産の売却などの相手先を地域内で探さざるを得ないケースが多い。ブライトン・ジャパンは地銀間のハブ機能を担うことを目指す。複数の組織の連携で、より幅広い支援を可能にする。 人や事業の「可能性」の目利きをし、持てる力を発揮できるよう後押しする。長すぎた低成長時代を超え、銀行はそんな本来の姿を取り戻そうとしている。
齋藤 英香