NMB48・安部若菜さん小説「私の居場所はここじゃない」インタビュー 夢をめざす同世代へのメッセージ
いちばん共感するキャラは
――トップパッターで登場するのはアイドルを目指す丸山莉子で、この子を中心に物語が展開するのかなと思いきや、実はそうではなかった。 莉子ちゃんをきっかけに物語が動き出しはするんですけど、5人全員が本当に絡み合う話にしたかったので、誰が一番メインと言われたら迷うぐらいの関係性になりました。 ――莉子は触媒のような、いちばん芸能界とは縁遠いというか、素人に近い感じの子ですが、他の子がみんな莉子に何かしら刺激を受けていきます。 そうですね。5人全員をつなぐ役割をしてるのが莉子で、その子がいちばん普通の女子高生というのもポイントなのかなと思います。 ――みんなそれぞれ大きな夢を持っているけど、なかなか思い通りに行かなくて、自分にないものを持っている他のメンバーに気後れしたり嫉妬したりします。 5人の中でいちばん秀でたものはないんだけど、でもそんな子がいろんな才能を持ってる4人に影響を与えていくというのが面白いところなのかなとも思います。 ――藤原美華の章は、ホラーみたいでしたね。夜中に怖がりながら読みました。 嬉しいです。美華はかわいそうなシーンもあって、追い詰められていくところもあるんですけど、できるだけ怖く書くのと、精神的ストレスをどれだけ文章に落とし込むかはこだわりました。普段は明るい、ちょっとギャルっぽい女の子なので、そんなつらい目に合わせてしまってごめんと思いながら書いてました。 ――読んでいくと、つむぎという登場人物が安部さんにいちばん近いのかなと思ったんですけれど、ご自身では誰が近いと思いますか? 自覚はなかったんですけど、別の取材の時もそう言って頂いたので、びっくりしてます。自分がいちばん共感するのは純平っていう、自分が普通であることにコンプレックスを持っていて、特別になりたいと思ってる男の子なんですけど。
夢に悩む10~20代に寄り添えれば
"――芸能界は全てが競争です。全員を蹴落とすつもりでないとやっていけないと考えてください。 ――結果が出ると分かっているならだれだって努力します。分からないのに努力し続ける人にこそ価値があって、そういう人がいつか純平さんの言う『特別』になれるんじゃないですか。" ――これ、安部さんの芸能界でやってきた実感かなと思いました。 確かにそうかもしれないですね。私もNMB48でもがきながら7年目になるんですけど、今も60人ぐらいいるので、人と比べられる環境で育ってきたからこそ、今回の話になったのかなと思います。 "――今まで練習してきたことはどんなメンタルでも勝手ににじみ出るからだいじょーぶ ――ずっとそこにいてもいいと思える居場所なんて、多分この世の中のどこにもない。運命的な出会いや、夢中になれる何かも、ある日突然舞い降りたりはしない。…自分自身が一歩踏み出すかどうかだけ。" ――ここは安部さんがこれまで歩んできた道乗りを経ての、同世代へのエールだなと思って読みました。 そうですね、自分も今まで言われて来たような言葉だったりします。 ――『私の居場所はここじゃない』というタイトルに込めた思いは。 ずっと「居場所って何だろう」と5人が探していて、「夢」というものを通して居場所を見つけにいくんですけど、私が今、夢を叶えた場所でアイドルをしてきた中で、夢のいろんな面を見てきたからこそ出て来る言葉とかもあるのかなと思いますし、夢に悩んでいる人にもぜひ読んでほしいですね。 ――改めて、今作はどんな人が読んでくれたらいいと思いますか? やっぱり10~20代、夢を追いかけていたり、「何かにならなきゃいけない」みたいなプレッシャーで悩んだりしている方が読んで、少しでも寄り添えるような話になったらいいなと思います。もう大人になった方でも「まぶしい」って思いながら楽しく読んでいただきたいです。人間関係の微妙な細かいところもこだわっているので、ぜひたくさんの方に読んでいただきたいです。