ボクシング内紛問題が泥沼化。JBC責任者の辞任示唆でも解決せず
JBC(日本ボクシングコミッション)が管理する健康管理見舞金(健保金)の扱いを巡って、全国のプロのジムを統括する日本プロボクシング協会(以降、協会と表記)と対立していた問題で5日、両団体のトップが解決に向けて協議した。JBCの浦谷・統括本部長が辞任することを引き換えに、一連の問題を解決させることで協議が進んでいたが、JBCが用意した合意文書を巡って協会内の意見がまとまらずJBCとの協議も決裂した。 試合で負傷した際の治療費にあてるため、選手から徴収して積み立てていた「健康管理基金」は、文科省の指導などもあり、平成20年にJBCの一般会計に組み込まれ「健康管理見舞金」に名称を変え、継続運用されることになった。だが、その後、JBCが懲戒解雇した前JBCの事務局長、安河内氏らとの裁判闘争に突入。最高裁まで控訴を繰り返してJBC側が敗訴したが、その裁判費用、慰謝料、和解金などの多大な支出に一般会計に組み込まれていた健保金が、使われているのではないかの疑念が協会内部で浮上。協会側は、“安河内裁判”の一審での敗訴後、無駄な出費を避けるため控訴を取り下げることを要望したが、JBCは、その要望を聞き入れず、裁判を続けて敗訴したため、さらに不信感が高まっていた。 JBCに対して、協会や一部の協会員が、再三にわたって、健保金の扱いについての説明を求めてきたが、納得のいく返答がなかったため、7月30日に、名古屋の緑ジム会長で過去に中日本協会会長を務めるなどした名古屋地区の“重鎮”松尾敏郎氏を代表とする「ボクサーの権利を守る会」が「健康管理見舞金」の会計に不明瞭なところがあるとして、JBCの浦谷本部長らを刑事告発する方向であることを記者発表。10日に東京地検に告発状を提出する考えを明らかにして、いわゆる「健保金」問題が表面化した。 これらの問題解決のため、JBCと日本プロボクシング協会側は、協議を重ね、この3日には、東日本、中日本、西日本、西部日本の各協会長も集まり協議を行った。協会側が「浦谷氏が辞任するならば、不満の声をまとめましょう」と提案、当初、浦田氏は即答しなかったが、体調不良で協議に参加できなかったJBCの秋山理事長に相談の上、その提案を受け入れることを明らかにし、両者は“合意”に達したと見られていた。 協会の渡辺会長も「松尾さんが求めていることのひとつが、浦谷さんが辞めることだったので、訴訟は下げてもらえると思った。これ以上、業界のイメージダウンは避けたい」と、落としどころに納得していた。 だが、この日、JBCが用意した合意文書は、これまでのJBC側の主張を協会側が了承した、とするもので、「一部の方々から認識に相違が生じて問題化してきました。協議の結果、健康管理基金に不信感をいただいていた方々にも、当方の説明をご理解していただくことができました」と、書かれた合意文書を弁護士を連れてこの日の協議に臨んだ協会側の金平副会長が問題視した。 金平副会長は「平成26年に健保金に関しては、別口座とすることが文書で約束されている。それが、なぜなくなったのか。いつなくなったのか。この内容で合意しては協会員に説明ができない」という。