ボクシング内紛問題が泥沼化。JBC責任者の辞任示唆でも解決せず
協会側の渡辺会長も、「浦谷さんが辞めてJBCの体制が一新すれば、今後は、なんとかなると考えたが、金平さんからすれば、その考えは甘くて、一度、こういう合意をすれば、なかなか元に返せないという。今後は、文書の訂正をJBCに求めていきたいが、松尾会長の告発を止めるには時間がない。なんとか協会側の意見をそれまでにまとめたいが」と困惑の表情。浦谷統括本部長が辞任しても、実質、JBCの方針をまとめているのは秋山理事長だから、安河内氏の復職で、渡辺会長が期待するような新生JBCに生まれ変わるかどうかも疑問。現在、弁護士を通じて、安河内氏は、復職に関しての環境を整えることを協議しているが、これが前に進んでいないことを考えると、金平副会長の慎重な姿勢も、わからぬでもない。 しかし、時間切れで、再びJBCが、松尾会長と法廷闘争を行うとなると、また無駄な裁判費用をJBCの会計から支出することになる。繰り返すが、一般会計に、くみこまれている健保金の不明瞭な会計を協会側が問題にしたのは、結果的に、安河内氏が大切な人生の時間を削りとられ、JBCにもボクシング界にもなんのプラスにもならなかった“安河内裁判”に多大な支出を行ったことにあり、そういう無駄なお金を使う組織のガバナンスに疑問を投げかけているのだ。その根底には、JBCの財源が一部を除けば、決して経済的に潤っているわけではないジムや選手の血と涙と汗の結晶であるライセンス料や各種承認料で成り立っていることへの感情的なわだかまりがある。 「おれたちがJBCを食わせてやっていると協会側は言うが、コミッションがなければ、日本のプロボクシングは成り立たない。そのことをわかっているのだろうか。ボクシング界は、JBCと協会が共に両輪で支えていかねばならないのだから」と、浦谷統括本部長は、正論を訴える。 JBCが主張しているように健保金の扱いについて、法的な問題がなかったとしても、その“しこり”を解決する努力を行わない限り、本当の意味で手と手を取り合ってのボクシング界の発展はない。いずれにしろ、よほどのボクシングファン以外には、ボクシングコミッションと、日本ボクシング協会が、どう違うかも判断できないような話の中で、健保金と言われても、なおさらわかりにくく、内紛、裁判闘争、という言葉だけが一人歩きしている現状が、何を及ぼすかをJBCも協会も深く考えるべきである。ファン不在、なにより、ボクサー不在。これ以上、無駄に金も時間をかけるような“裁判闘争”を避ける努力を、JBCと協会の両者は最後まで続けなければならないだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)