韓国文学が描く戦争・分断・民主化…激動の現代史を知る 書店員オススメの5冊
作家ハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞で再び注目を集めた韓国文学。朝鮮戦争と南北分断、軍事独裁、民主化運動など、激動の現代史を背景に描いた作品が多いのも特徴です。11月23・24日に東京・神保町で開かれる韓国文学のお祭り「K-BOOKフェスティバル」と、全国の書店で開かれる「K-BOOKフェア」を前に、参加する書店の店員たちが、韓国現代史を知る手がかりになる5冊を紹介します。
韓国映画から見る、激動の韓国近現代史
知ってから観る 韓国映画を観るようになって気が付いたこと。 政治や歴史の題材がかなり多いな、ということでした。1回目では背景がよくわからず、人から聞いたり、解説を読んだりして何回も観ました。しかし、常にモヤモヤしました。本書は、まさにそんな韓国映画と歴史のつながりを、よく知られている映画44本から読み解いていきます。崔氏の解説を読んでいると、今まで観ていた登場人物が、なぜそうしたのか、なぜそんなストーリーになったのか、モヤがかかっていたものが、少しずつあぶりだされてくるようです。でも、これを読んだ後でも、何回も観ないと、きちんと考えないとという思いは消えません。崔氏の解説が誠実で真摯であるぶんだけ、自分も考えながら映画を観ないといけないという感情が、どんどん強くなります。多くの方に読んでもらいたいです。(丸善ジュンク堂書店福岡店・松岡千恵)
父のところに行ってきた
物語に放りこまれて揉まれて 訳者のひとり、趙倫子のあとがきのタイトルは、「すべての「匿名の人びと」に捧げる物語」。作家は書く。「激動の時代になんとか命だけでも生きながらえ、あれほどの多くのことをやりとげたのに、自分は何もしていないと言う。そんな口数の少ない匿名の父を書いているときに、次々とあの瞬間、この瞬間がどうしようもなく立ち現れて、押しとどめることができませんでした」(「作家の言葉」)。この言葉のとおり「父」の人生に立ち現れるさまざまな瞬間・局面に、体ごと引きこまれるようにして一息に読んでしまった。韓国の現代史を生き抜いてきた「父」の人生を、ページをめくるわたしは目撃し、その物語に放りこまれて揉まれて、そして帰り道を忘れて呆然と本を閉じる。時代も国も異なる匿名の人生に、そんなふうに自身がひらかれるのは、作家・申京淑の言葉のもつ力だと思う。(カライモブックス・奥田直美)