新八尾方式でネットワーク充実 種別超えたCSW連絡網(大阪)
「おせっかい日本一」を掲げて地域福祉を進める大阪府八尾市で12月5日、新たなCSW(コミュニティーソーシャルワーカー)の連絡体制がスタートした。全老人施設が連携してCSWが複数でケースに対応する「八尾方式」の活動の輪に、障害、児童分野のCSWが加わり、中間的就労や居住支援の担当者らも連絡網に入った。旗揚げの交流会には、台湾からも大学生や教員が参加。「日本のモデル」も視野に入る「新八尾方式」を学んだ。 近鉄八尾駅に近い、市文化会館プリズムホール。昼過ぎからの新連絡網の旗揚げは、中間的就労事業担当者との合同交流会の形で行われた。 ■熱気に包まれた旗揚げ 近隣の東大阪市や交野市からもCSWや施設長の参加があり、約60人の熱気に包まれた。 「ようこそ参加くださいました」 八尾隣保館の荒井惠一理事長があいさつ。八尾市内の社会福祉法人で組織する同市社協施設連絡会の会長として、CSWや中間的就労について話した。 台北と高雄両市にキャンパスのある実践大学(学生約1万2000人)の福祉学科で学ぶ学生や教員ら10人も参加、通訳の言葉を真剣にメモした。 ■仲の良さあってこそ 老人施設の連携は、1996年にさかのぼる。当時、八尾市にあった4施設が連絡会を結成。介護保険法の施行などで特別養護老人ホームの新設が相次ぎ、2001年に施設長会が発足。すべての15特養が参加している。 「職員の交流を図りながら研修するというのが目的の一つ。これが現在のCSW活動の礎になったと思います」(荒井会長)。 八尾では、市内を3地域に分けてCSW班(チーム)を編成。本人や関係機関から相談の入った施設のCSWは、まず、班の代表施設(輪番制)に連絡。代表施設のCSWは自らの対応や他の施設に相談して、2施設のCSWが相談者を訪ねる方式を構築した。 これが「八尾方式」と呼ばれる連絡網体制だ。(1)2施設であたるため、違った視点や価値観で対応できる(2)CSW同士が顔の見える関係になり、全体の支援力向上につながる(3)DVなどナイーブなケースでは、男女のペアで相談できる――などがメリットとして評価されている。 あいさつに立った大阪府社協老人施設部会の西田孝司部会長は、「法人レベルではほかにもあるが、地域レベルでここまで連携できているところは、例がない。日本のモデルになる」と話した。 台湾の参加者が「なぜ、できるのか」と聞くと、進行役の八尾隣保館の久保田佳宏さんらは、笑みを浮かべて「トップ同士の仲が良いからですね」。 ■しあわせネットワーク 合同交流会を起点として、CSWの連絡網に市社協担当者、障害部門、児童部門の名簿を追加。中間的就労事業や居住支援担当者の名簿も追加した。 「八尾方式」の活動の輪が広がったことで、オール大阪で展開している「大阪しあわせネットワーク事業」の充実も期待される。 大阪では、04年に大阪府社協の老人施設部会が「電気を止められた」「明日、食べるものがない」などの切迫した生活困窮者に、食材などの「現物給付」も含めた緊急支援を行う「生活困窮者レスキュー事業」を開始。この時、日本で初めてCSWが生まれ、八尾のCSW交流会もできていった。 現在では、レスキュー事業に加えて、全種別法人が特別部会費(社会貢献基金)を出して、居場所づくり、子育て支援、中間的就労などの社会貢献事業も進める「大阪しあわせネットワーク事業」に発展している。 交流会では、地域に拠点を置いていた大阪府社会福祉協議会所属の「社会貢献支援員」を25年4月から、本部で一括することも発表され、「大阪しあわせネットワーク」との連携強化が打ち出された。 八尾市の掲げる「誰ひとり取り残さないしあわせを感じる共生のまち~おせっかい日本一」を次の世代につないでいく、新たな一歩を踏み出した。