大河ドラマ「光る君へ」でききょう(清少納言)を演じるファーストサマーウイカさんへインタビュー!SNSの反響通り「生まれ変わり」と言われても、大げさだとは思えないほどピッタリなキャラクターに親近感
今回は、大河ドラマ『光る君へ』で清少納言を演じるファーストサマーウイカさんへのインタビューをお届けします!お仕えする定子様のことを“推し”と表現するなど、歴史人Kidsにとっても馴染(なじ)みのある言葉選びで伝えてくれた想いは、まだ本作を観たことがない皆さまも必見です! ― 大河ドラマ初出演ですが、オファーを受けた時の感想を教えてください。 オファー決定前に、制作統括とチーフ演出、そして脚本家の大石静先生と面談をさせて頂きました。私は『ここが最終プレゼンだ!』という気持ちで挑んだので、正式にオファーをいただいた時には、嬉しい気持ちでいっぱいでした。 清少納言というのはどんな人かは分からなくても名前や何かを書いた人というのは知っているし、歴史をさかのぼるほど、歴史上で有名な女性偉人というのは数少ないと思います。その中で、本作の主役である紫式部のライバルのような印象が強い、清少納言という配役には何よりも驚きが大きかったです。 オファー時点では、どのくらいの割合で出演するのかは分からないものの自分だったらかなり注目する配役なので、吉高由里子さんが演じる紫式部のお相手に不足のないようなキャラクターになればいいなと、ぼんやり考えていました。 ― 清少納言という人物についてどのような印象をもっていましたか? 清少納言について、あまり深くは知りませんでした。『枕草子』についても、“春はあけぼの”から始まる、綺麗な風景のお話だと思っていました。 演じるにあたって『枕草子』や彼女に関わる本を読んだところ、非常に自分と考え方や表現の仕方が近い人物だなと感じました。最近SNSでは、「生まれ変わり」と言っていただくことが多いのですが…『言いすぎでしょ!』とも思わないというか、『かもしれない』と思うほど、他人とは思えなくて。(笑)脚本ももちろんですし、史跡や本などをみても同様に思うので、すごく親近感をもってキャラクターを演じさせて頂いています。 色々な方とお話する中で、それは大河ドラマでは珍しいことなのではないかと言われました。例えば、歴史上の人物を演じられる役者さんで「自分とマジそっくりですねー!」と言える方って少ないと思うんです。(笑) オファーを頂いた当初はプレッシャーもあったのですが、『枕草子』や脚本を読むと『こういう時にはそういうでしょ、それ以外なんていうんだよ!』など、気持ちが重ねあう瞬間があり、彼女を知れば知るほど不安というものが消えていきました。また、感情表現という部分でいえば『これ全然気持ち分からないよ~』と思うことは一度もなかったです。 ― 美文字が話題になっていましたね!撮影に向けて準備されたことはありましたか? お稽古(けいこ)を受け、十二単のさばき方などは最初に戸惑(とまど)ったこともありました。動きって一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)に、キャラクターの個性というものがでるものだと思うんですね。 例えば、女房(にょうぼう)たちは名前を呼ばれた時に「なに!?」バッと動くのではなくて、「なんでしょう…?」ソソソッとゆったりと振り向いてくださいねと言われました。もちろんあえて雅(みやび)にすることもあったと思うんですけど、何回考えても清少納言はキビキビッとすることもあるのではないかと思ったので、足さばきに慣れてきたら意識的にあえて取り入れてみたりもしました。御簾(みす)を下すシーンでは、御簾下しテクがあってチンタラしている人に「あの人遅いな~」とか清少納言なら言ってそうだな…とか。(笑)キャラクターの中での日常の所作を考えられるようになりました! 書に関して、清少納言の筆跡は残っていなかったので、書道指導の根本知先生がキャラクターに合わせた文字を作ってくれました。右肩上がりで勢いがあるような字が良いのではないかと提案していただいて、その清書をみながらかなり練習しました。直筆だということを後で絶対にSNSで言おうと思って、練習した証拠もたくさん写真にも撮っておきました(笑) 余談なのですが…、漫画(まんが)で読む偉人伝とかコミカライズされたものって色々あるじゃないですか。清少納言がみーんな私みたいな顔しているんです!(笑)エッセイが残っているがゆえに、イメージがつきやすいのでしょうね。だからこそ、みんなで気持ち一つにききょうというキャラクターをつくることができたし、稽古も迷いなく望むことができました。 ― ききょうの魅力を教えてください! ききょうは、自分の信念を曲げず、野望・野心家という選択肢をとるをいうことが当時では異端といえると思っています。 現代においても、キャリアを重視する女性が増えてきていると思うので、ききょうの考え方はとても先進的。別に家庭がいらないと思っているわけではなくて、家庭ももちろん大切にしつつ自分のやりたいと思うことを、優先順位をつけて選択できる人です。周りにただ身を任せるのではなくて、自分で道を切り開いていくという人物像が、平安時代の女性の考え方としては稀有(けう)だったのかなと思います。 私自身も、貪欲(どんよく)に人生を切り拓(ひら)いて来たタイプだったので、彼女の生き方にも非常にシンパシーを感じています。 ― “推し”定子様の生き方についてどのように感じましたか? 定子様のお墓にも行かせて頂いたり、彼女に関するものも読むようにしていました。スタイリッシュでおしゃれで、25歳でこの世を去(さ)ったとは思えないほど、立派なお方だなと感じました。 充希さんの演じられる定子様が本当に素晴らしくて、私はただただもらうだけ。素直にいるだけでよかったので2人のシーンはもう全て定子様の力…充希さんの力に引っ張っていただきました。泣かなくていいところで何回もボロボロ泣いてしまいましたし。誰しもがあの定子様を目の前にしたら自然とそうなると思います。 定子様との初共演シーンはSNSでの反響も大きかったのですが、これはみんな心の中に定子様のような存在をもっているからではないでしょうか。それは我が子かもしれないし、アイドルかもしれないですね。 ― 清少納言が定子様の光の部分だけを描くことについてどう感じましたか? ドキュメンタリー性をもたせるなら、まひろが指摘するように影の部分を書いた方がおもしろいという考えも分かります。分かるけども…私がその時代にいても清少納言と同じ選択をしていただろうと思います。そもそも、本作の中で『枕草子』は定子様を元気づけるために書いたという説を採用していて、その時点で、悲しいことを書くというのは最初のテーマから反れている。ききょうにとっては真実を書き残すことが目的ではなかったんです。 皆さんの日常でもあるかもしれませんがSNSやブログなどを書く時って、ちょっとどこかでええかっこしいな部分があると思うんです!おしゃれに締(し)めてみたいとか、普段使わないような言葉を使ってみたいとか。文章を書く時って、本当の自分をさらけ出しているかというと、何かまとうと思うんです。それによって“作家性”というものもでてきます。清少納言もきっと真正面から書いていない部分があると思うんですよね。同じ作家だからこそ、紫式部はそれを見抜いていたのかもしれません。 私は今回、定子様のことを推しのような存在と定義していたのですが、推しの裏の部分は必要ないという考え方があったりします。現代のアイドルのコアファンとかも一緒で、裏側を見たくない方もいらっしゃいますよね?「お手洗いなんて行きません」みたいな。(笑)そういう、本人が見せたく無い部分、ファンが見たくないものは見せる必要がない。 『どれだけ苦しい思いをして、歯を食いしばっていたかということを仕えていた私は知っている。でも彼女は、一条天皇や兄弟たちにそれをみせないでクッとこらえていた。それを私が書いて世に広める…そんなことするわけないだろ!』って。(笑) 枕草子が1000年も愛され続けているのは、この誇り高き信念が込められているからなのかな、と私は解釈しました。 ― 藤原定子演じる高畑充希さんとの共演シーンは終わってしまいましたね。撮影期間中はどのようなコミュニケーションを取っていましたか? 定子様と充希さんが、重なるエピソードが2つほどありました。 1つは、充希さんのお誕生日に靴下をプレゼントさせていただいた時のことです。それをさりげなくリハーサルの時に履(は)いてきてくださっていたので「履いてくださっているんですね~」とお声がけしたら、「うん、可愛いねって褒めてもらえたよ、ありがとう。」とお返事をしてくださったんです。短いセンテンスの中に、さりげなく『第三者からの評価も良かったです』という情報を乗せていることに、“うま~い!素敵~!うれしい~!”って思いました。普段の充希さんは、愛くるしいけど、どこかサッパリとした方という印象で、そういうところもどこか定子様と重なるところがあるなと感じました。 2つめのエピソードとして、『令和・枕草子』があったとしたら、『あげぱん』という章がありまして…(笑)以前から充希さんと、NHKのカフェテリアにあるあげぱんを食べたいけど、いつも売り切れているというお話をしていました。 そんなある日、なんと買うことができたんです!その話を何度もしていたので、同じ日にマネージャーさんも気を利かせて買ってきてくれて、2つになってしまいました。『そうだ、これは充希さんにプレゼントしよ~!』と思い差し上げたんです。 翌日、撮影の合間に楽屋に戻ったら、昨日とは違う味のあげぱんが置いてあったんです。マネージャーさんが買ってくれたのかと思い尋ねたら買っていなかった。『もしや、、、定子様だ!』と思い、充希さんの元へ行ったら「ごめんね、2日連続ではいらないと思ったんだけど。」と言ってくださったんです。 この時に、ふと思い出したんです。『枕草子』に山吹の花びらのエピソードがありまして。清少納言が道長のスパイだと疑われて里帰りしている時に、定子様から手紙が届くんです。その手紙自体には何も書かれておらず、同封されている山吹の花びらに「いはで思ふぞ」と書かれていたんです。現代語でいうと「言わずとも、あなたの想いは分かっておりますよ」みたいな意味のメッセージです。多くを語らず、スマートに愛を届けてくださるところが、まさに定子様!人目もはばからず『充希様――!!!』と感動してしまいました。(笑) 清少納言は定子様がいなくなってからの人生もあったでしょうし、いらっしゃらなくなってもずーっと心の中には定子様が在りつづけたと思います。 ききょうとして役作りをする中でも、定子様がいない自分が苦しいというよりも、『こんなに素晴らしい定子様が、なんでこんなに悲しい人生を歩まなくてはならなかったんだろう』という、悔しさややるせなさが常に自分の中にこみ上げてきました。何よりも “推し・定子様”への無念さというのが強かったです。 ― ききょうは、まひろ(紫式部)のどのようなところに魅かれたと思いますか? ききょうは自尊心もありますし、自分の得手(えて)不得手(ふえて)も認識したうえでそれを表に出さないタイプ。きちんと空気を読んで、あえて壊すことを選択できたキャラクターだと私は解釈(かいしゃく)をしています。 まひろのことは、『自分にもっていないものをもっているキャラクターだ』ということを、出会ってすぐに気づいているのではないかと思います。 同じようなタイプだときっと反発してしまったと思うのですが、お互いが両極にいるからこそ魅かれあったのではないですかね。物事の考え方とかが対局だからこそ、お互いにないものをおもしろがれる存在だと思います。第三者からみると、志(こころざし)への向上心や、行動力の高さなど共通点も多くあるんですけどね。 そして、自分の言っていることを理解してもらえないことが多かった中で、まひろには理解してもらえると気づいた瞬間に唯一、友達として認めることができる存在になったのではないかなと思います。 ― まひろ演じる吉高さんとのエピソードを教えてください! 圧を感じさせず、全てを受け止め、予測できない面白い対応…、圧倒的な存在です! 『まひろ様ってすごいことを考えるのね!』というききょうの気持ちと、『吉高さん、すごいですね!』という自分自身の感覚が全く同じなので、リアルな感情そのままにお芝居をすることができます。 由里子さん言うんです、(モノマネしながら)「私ね、何も考えてないよ~」って…もうそれが天才で、最高です!!(笑) 由里子さんと充希さん、ほぼ同年の二大天才と2人で共演するシーンが多いので、本当に贅沢で、ありがたい経験をさせてもらっています。それぞれからバトンをもらって、それを全力で返せるだけ返すの繰り返しです。 ― 撮影初日に監督から「もう少し優しめに」と言われたというエピソードをお話していました。どのように変化させていきましたか? 初登場のききょうはまだ十代後半なので、若さゆえのききょうのアッパーさや、『同世代の子に負けないぞ!』という表現を意識していましたが、撮影初日ということから肩の力が入りすぎて目がギンギンだったみたいで、シンプルにこのアドバイスが入りました!(笑) 一人で幅のある年代を演じるということを考えると、私は出演するにあたって年齢表現というのを大切にしたいなと思っています。ききょうはたまにしか出てこないので、そこを細かく表現できたらと取り組んでいます。また、まひろへと定子様へでは全くアプローチを変えるように心がけています。実際、初めて会う人と自分の家族に喋るのとでは、対応が変わるじゃないですか?そこに話すスピードなどの+αの表現を乗せられたらと思います。 実はメイクさんも細かく調整してくれていますよ!シーンに合わせて目がキリっと見えるようにしてくれたり、優しく見えるようにしてくれたり、すっぴんに近いメイクだからこそ細やかなテクニックが活きてくるんですよね。 今後、ききょうは丸くなってくる部分と尖(とが)っている部分がより明瞭(めいりょう)に出てくると思います。一方、まひろはここからどんどんキリっとしていくんだと思います、ききょうといるときにはまだその姿は見えませんが…。 そういうみんなの心情の変化を追っていくと役者さん方のそれぞれのアプローチやプランの凄さも見えるので、個人的にはそれを楽しみにしています!
歴史人Kids編集部