「お前は責任取れんのか?」復興支援に奮闘するなすび、福島の風評被害に直面 #知り続ける
廃炉までは100年以上かかるかもと危惧 長い戦い
――“福島のいま”について教えてください。 地震による建物の破損・倒壊などについては、着実に復旧・復興が進んできています。ですが、原発事故による被害については、まだまだ時間がかかるだろうなと。今でも避難指示が出ており、故郷に帰れない人たちがたくさんいらっしゃいます。住むどころか、立ち入ることすら制限されている地区もあります。 ――福島第一原発は「廃炉」が決定していますが、まだまだ時間がかかるのでしょうか? 当初は、廃炉まで30~40年と言われていたんですね。しかし、実際に作業を進める中でそれは徐々に後ろ倒しになっています。ロボットを中に入れて調査・分析した結果、想像以上に困難な作業が残っていることが分かってきた。下手したら100年以上とか、かかってしまうのかも知れないと危惧していて、長い戦いになると思います。
――放射性廃棄物の問題もあります。 福島県内で出た放射性廃棄物(除去土壌など)は、今は原発近くの地域にある「中間貯蔵施設」に保管されています。2045年には、それらの廃棄物の「最終処分場」を福島県外につくるということが、すでに法律で決まっています。でも、それに向けての動きが全然進んでいないんです。僕はこういった情報を福島県の人たちだけではなく、全国の人にも知ってほしい。 そもそもですが、福島県の原発でつくっていた電力は、福島県で使うための電力ではないんですね。“東京電力福島第一原発”は、関東圏の皆さんのための電力なんです。なので、福島第一原発の問題は「福島だけの問題」では決してないですし、放射性廃棄物の最終処理の仕方については、全国の皆さんと一緒に考えていけたらと思います。
活動の中で直面した厳しさ「お前は責任取れんのか?」
――その他、なすびさんが現地で感じた課題や困難はありますか? 物産展で「こうやって福島のもん売ってるけど、なすびお前は責任取れんのか?」と、面と向かって言われたことがあります。一緒にいた農家の人は「どんなに検査をしていても、福島県産って言うだけで、もう手に取ってすらもらえないんだ……」と肩を落としてがっかりされていました。 こういった風評被害は、本当に難しい問題だと思います。いわゆる「安全」というのは、数値で表す客観的な価値基準です。ですが「安心」となると、人が判断する主観的な価値基準になります。いくら安全な数字を示しても産地が福島というだけで「ちょっと危険なんじゃないの?」と思ってしまう人たちがいるんです。 また、風化に対しても危機感を感じています。震災から10年も経つと、福島の情報はあまり入ってこなくなりますよね。自分で積極的に情報を取りに行かないと、目にすることも少なくなってくるでしょう。まだまだ被災地で大変な思いをしている人がいるし、残る課題は山積みなのに、どんどん忘れ去られてしまうんです。 ――これらの解決のため、どんなことができるのでしょうか。 ……実は僕、いまだに「なすび君が服を着てるの初めて見た!」「今日は服着てるんだね」って言われるんです。「進ぬ!電波少年」で懸賞の企画に出演していたとき、ずっと裸だったからなんですが。20年以上も経つのに、僕のイメージは“裸”なんです。何が言いたいかというと、大きなインパクトのある出来事に対して、一度根付いたイメージを拭い去るのはなかなか難しいんだなあってことです。 じゃあ、イメージの払拭のために何ができるのか。僕はとにかく諦めないで情報を発信し続けるしかないと思っています。福島の農作物や水産物は安全で、世界的な基準から見ても相当厳しい検査をしている。そういった正しい情報の発信を積み重ねていくことで、風評被害が減り、同時に風化も防げるようになればと考えています。