J1で活躍→英移籍で苦悩「サッカーの種類が違う」 ファン人気獲得も思わぬ壁…23歳の現在地【現地発コラム】
右ウイングバックで先発起用も惜敗したワトフォード戦
“Yuuuuu!”――ブリストル・シティのファンは、平河悠がボールに触れる度に声を上げる。11月26日に行われたチャンピオンシップ第17節ワトフォード戦、ロンドン郊外北西部で惜敗(0-1)を目撃することになったアウェーサポーターたちは、試合前のウォームアップ中にも新ウインガーの名を呼んでいた。 【動画】現地ファン「最高だったな」 疑惑の声も…平河悠が決めた”神の手ゴールの瞬間” 英語でも発音に苦労しない「ユウ」という名前。そして、ドリブラー好きな英国人が目を引かれずにはいられない、相手ゴールへの積極姿勢。ハートの掴み具合に関して言えば、FC町田ゼルビアから期限付き移籍中のU-23日本代表FWは、同じくイングランド2部1年目の田中碧(リーズ)と大橋祐紀(ブラックバーン)という、A代表の両先輩にも負けていない。 露骨なハンドが見落とされた第13節でのゴールも、ファンの間では物議を醸すのではく、好評を博している。ここは、38年前にディエゴ・マラドーナの「神の手ゴール」に泣かされた国。しかし、それが自軍の得点となれば話は別だ。 ワトフォード戦の記者席で隣同士になったのは、ロンドンのオンライン地元紙でレポーターを務めるベテランのヤン。ブリストルを心のクラブとする彼に、「“日本人の手ゴール”観た?」と振ってみると、「何食わぬ顔で喜ぶゴール直後が、また最高だったな」と言って笑っていた。 もっとも、本来は移籍後2得点目として記録されるべきではなかったゴールに限らず、「同胞」のフィルターがかからない視点からは厳しい見方もされる。 例えば、3試合ぶりの先発が60分間で終わった、この日のパフォーマンス。試合後のミックスゾーンで立ち話をしたスポーツ専門ラジオ局のレポーター(素顔はウェストハム・ファン)は、「ダメだったね」の一言だった。スタメンとしては通算8試合目にして初体験となった、右ウイングバック起用でのピッチ上でも容赦はなかった。 チームと同様、立ち上がりは上々だった。両軍を通じて1本目のシュートを、前半3分に左足で打った平河。その前後には、スルーパスに反応したかと思えば、マークを剥がして低弾道のクロスを入れる姿も見られた。スタンドのブリストル陣営は、キックオフ直後から「ユーゥゥゥ!」と繰り返すことになった。