ヘビはモチを詰まらせないのか?ヘビが丸のみできる理由を、進化生物学者に聞いてみた
「インパラ」や「子牛」を丸のみした記録も
ヘビは現在、世界各地で約4000種が確認されており、種によって捕食対象も異なる。 体長は、20センチメートルほどの小さなものから10メートルほどの大きなものまで種によってさまざまだが、ニシキヘビ科などの大きなヘビでは、インパラや子牛を丸のみした記録があるという。 なんでも食べる雑食性のヘビがいる一方で、ネズミなどの哺乳類、カエル、カタツムリ、鳥の卵、自身よりも小さなヘビ、魚、アリ・シロアリなど、特定の獲物を好んで「専食」するものもいる。 いずれにせよ気になるのは、ヘビが窒息せずにあの細長い胴体にどうやって獲物をのみ込めるのかということだ。その秘密は、ヘビの骨と臓器の形状にある。 ヘビはヒトと同じ脊椎動物で、背骨に多数の肋骨が付いている。ただ、ヒトの肋骨は肺の周囲を途切れることなく覆っているのに対して、ヘビの肋骨は細長い胴体の「腹側」で途切れている(下の画像参照)。 大きな獲物が体内を通過するときには、肋骨が獲物のサイズに合わせて広がる。皮膚もうろこ以外の部分が伸びるため、口を開いて飲み込めるサイズであれば、たとえ細長い胴体より大きな獲物であっても通過できる。 ヘビの臓器の一部は、肋骨に囲まれた細長い空間に収まるように進化してきた。ヒトには左右対称に2つの肺があるが、ヘビの場合は、多くの種で左肺が退化して痕跡程度にしか残っていない。呼吸を支える右肺は細長い胴体に沿って長大化した。長さはヘビによってさまざまだが、体長の半分以上を占める種もいるという。 ヘビには、窒息を防ぐための仕組みも複数ある。 ヘビはヒトと同様に肺呼吸だが、実は肺の中でもガス交換(酸素の取り込み)を担う主要な部位以外からも酸素を取り込むことができる。そのため、大きな獲物が体を通過している時にも、少なからず呼吸を維持できるのだという。 窒息対策として、ヘビの気管の入り口(声門)も特徴的だ。 ヘビの気管の入口は口を開けてすぐのところ(上図)にあり、大きな獲物を飲み込んでいる最中にも気道を確保できるため、ヒトのように“喉が詰まる”ことはない。竹内准教授によると、ヘビは代謝が低く、そもそも酸素の要求量が少ないことも窒息しにくい要因の一つだ。ヘビの酸素の消費量は、同程度の体重の哺乳類と比較するとおよそ30分の1。実際、海に住むヘビは、潜水時に数分間から数十分間、息を止めていることもできるという。