北陸新幹線「延伸問題」 米原から先は、滋賀県「通勤新線構想」で解決できるのでは?
滋賀県の通勤新線構想と課題
筆者(北村幸太郎、鉄道ジャーナリスト)は、これまで北陸新幹線ルート問題に関する記事を当媒体に何本も書いてきた。その多くのコメントを通じて、小浜ルートの中止や米原ルートの再検討を求める声が高まっていることを実感している。 【画像】「えぇぇぇ!」 これが44年前の「米原駅」です! 画像で見る(計15枚) 米原派のコメントのなかで多く見られる意見は、 「米原ルートでも、新大阪~米原間の整備は必要だ」 というものだ。この意見に対して、さまざまな案が提案されている。例えば、 ・東海道新幹線と並行して、新大阪~米原間を全線複々線化する案 ・米原から草津線の貴生川や奈良線との交差箇所に新駅を作り、新大阪まで繋げる案 ・米原から伊賀上野を通り、奈良に至るルートで、奈良~新大阪間はリニア中央新幹線と共同で整備する案 などだ。しかし、これらの案が実現するためには、滋賀県が同意することが前提となるが、それが難しいのではないかと考えている。もし東海道新幹線を活用せずに新線を作るとなると、その費用をかけるなら、小浜ルートを選択したほうがいいのではないかとも思う。 とはいえ、京都を通過しない点では、小浜ルートよりも環境面での利点がある議論ではある。加えて、滋賀県を説得するための有力なカードがひとつある。それは、滋賀県が構想している「通勤新線計画」を北陸新幹線の一部として整備する案だ。この提案なら、滋賀県も賛成するかもしれない。 そこで今回は、滋賀県が構想する通勤新線計画について紹介し、それを北陸新幹線の一部として整備した場合の効果と課題についてまとめた。
滋賀県構想の通勤新線計画
滋賀県が構想する通勤新線計画は、1989(平成元)年から進められている「びわこ京阪奈新線」に基づいている。 この新線は、近江鉄道の米原駅を起点として、近江鉄道本線や信楽高原鉄道を経由し、京都南部地域を通ってJR学研都市線に至る予定だ。建設区間は、信楽高原鉄道の信楽駅からJR京田辺駅または松井山手駅までの約30kmにわたる。 現在、滋賀県や彦根市、近江八幡市、甲賀市、東近江市、米原市、日野町、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町などの1県10市町で構成される「びわこ京阪奈線(仮称)鉄道建設期成同盟会」が、実現に向けたPR活動を積極的に行っている。 また、近江鉄道と信楽高原鉄道は、新線の名前を冠した企画乗車券「びわこ京阪奈線フリーきっぷ」を販売するなど、ユニークな取り組みを進めている。