ホンダ・日産経営統合の“脇役”ながら利益創出力は主役の2社よりもはるかに高い「三菱自動車」の存在価値
ホンダ・日産自動車という大型経営統合の行方が注目されているが、その中で決して無視できない勢力となりそうなのが三菱自動車だ。年産80万台弱とホンダ、日産よりはるかに小規模ながら、実は一番ガッチリ稼いでいる。「他社のプラットフォームを使わざるを得ない逆境でも人気モデルを創出するしたたかさがある」と評価する自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、三菱自動車の好調ぶりをレポートする。(JBpress編集部) 【写真】売れるクルマがなかった三菱自動車を救った「起死回生の1台」 ■ 小規模ながらも営業利益率は「乗用車メーカー4位」の三菱自動車 にわかに経営統合話が持ち上がった日産自動車とホンダ。経営統合の基本合意書を交わした昨年(2024年)12月23日夕刻に行った記者会見の席上では、 「ホンダによる日産の救済ではない」(三部敏宏・ホンダ社長) 「どちらが上でどちらが下ということではない」(内田誠・日産社長) など、対等な立場であることが強調された。だが、ホンダの三部社長が経営統合を実行する条件として日産が経営再建計画「ターンアラウンド」を成功させることを挙げるなど、丁々発止の雰囲気を漂わせていた。 その会見の席にもう1社、日産自動車が筆頭株主となっている三菱自動車の加藤隆雄社長が立っていた。2023年の世界販売は78万台と、ホンダ(398万台)、日産(337万台)に比べてはるかに小規模な同社。今回の基本合意書締結においても「2025年1月末までにホンダ・日産の統合に合流するかを決める」とあくまで“脇役”で、会見での発言機会もほとんどなかった。 しかしながらこの三菱自動車、立ち回りによっては新アライアンスにおいて、単なる脇役に終わらない可能性がある。 確かに規模はトヨタ自動車の100%子会社であるダイハツ工業を除くと日本の乗用車メーカーの中では最も小規模。首位トヨタ自動車、2位日産自動車、そしてマツダ、ホンダ、三菱自動車が3位を争うという構図だった1990年代に3位グループから一頭抜け、業績が悪化していく日産に肉薄する勢いを見せた時代の面影はかけらもない。 ところがである。四輪車事業の収益性は決して悪くない。 今年度上半期の三菱自動車の営業利益率は6.9%。これはトヨタ、スズキ、スバルに次ぐ乗用車メーカー4位。同じ時期の日産の四輪部門はマイナス2.7%と赤字、ホンダも1~2%台で推移していた2010年台後半よりは通貨安の追い風もあってやや改善されたものの、3.7%にとどまっている。 三菱自動車の利益創出力は経営統合の主役である2社よりはるかに高いのだ。