来年に迫る保育園の「2025年問題」 需要ピークアウトで「突然閉園」急増の恐怖!
---------- 続発する園児虐待、突然の閉園、保育士の集団退職、助成金の不正使用……。 保育の現場は、今どうなっているのか? 今回は、園児や保護者、保育士に大きな影響を与える「突然閉園」と、その最大の要因である「保育のビジネス化」について、「介護・保育ユニオン共同代表」の三浦かおり氏がリポートする! ---------- 【写真】闇に葬られる「保育士の園児虐待」、通報しても「92%」が不本意な結果に
3日前に突然、閉園の連絡が
ここ1年、全国で「突然閉園」が続々と起こっている。 2023年6月末、三重県津市の私立認可保育園が閉園した。保護者がその連絡を受け取ったのは閉園の3日前。あまりの突然さゆえ、全国的なニュースとなり、子育て世帯や保育関係者をはじめ、多くの人々に衝撃を与えた。閉園の理由は、経営難で保育園が差し押さえられたことだ。行政から運営費が支給される認可保育園でありながら、施設が差し押さえられるほど経営状況が悪化していたというのである。 続いて、新潟県柏崎市の私立認定こども園でも、2024年3月での閉園が、前年の12月下旬に保護者に伝えられ、関係者に動揺が走った。3ヵ月前というのもかなり急であり、保護者や職員、そして子どもたちに大きな負担を与える。こちらの園も、経済的な理由が閉園理由とされた。 上記の2例は、その後、別法人が運営を引き継いだり、保護者の働きかけで閉園が撤回されたりして、最終的には「なんとかなった」が、突然閉園が強行され、そのまま結末を迎えてしまった事例も相次いでいる。 福岡県嘉麻市の私立幼稚園の保護者たちは、2024年3月8日に、「今月23日以降は保育ができない」と園から突然伝えられた。保護者が説明を求めるも、説明会は実施されず、さらに同月12日には「14日までしか保育しない」と告げられ、15日から事実上の閉園となってしまった。閉園の理由は、運営主体の家族間の揉め事であるとされた。 鳥取県米子市の認定こども園も、2024年3月いっぱいで休園することとなったが、保護者に正式な連絡があったのは3月22日だった。この園では副園長による園児への心理的虐待が問題となり、さらに職員の大量退職が追い打ちとなって、休園に追い込まれた。3月8日に行われた保護者説明会で、この副園長は、園は続かないと思うとした上で、障害者福祉施設やグループホームの運営に切り替えたいという趣旨の発言をしている。園児への虐待、保育士の大量退職、突然閉園などの問題を起こしておきながら、頭はすでに次のビジネスのことに移っていたのではないかと批判を受けている。 こうした保育園の「突然閉園」は、特殊な事例ではない。実は2020年頃から顕著にみられるようになってきており、今後ますます広がっていくことが予想される。保育園の需要がピークを迎えるとされる2025年を境に、定員割れや経営悪化に陥る保育園が増えていくとされるからだ。いわゆる保育の「2025年問題」である。 筆者が共同代表を務める、介護や保育業界の労働問題に取り組む労働組合「介護・保育ユニオン」では、保育労働者から年間約300件の相談を受けているが、「突然閉園」の相談も数多く寄せられている。「突然閉園」の被害を最小限に食い止めるべく、保育士たちが経営者に対して立ち上がった事例もある。 閉園は、公立、私立を問わず増えているが、利用者に猶予期間をほとんど与えず、より唐突に、強引な閉園に踏み切るのは、やはり民間事業者が経営する私立保育園だ。本記事では、私立の保育園で「突然閉園」が頻発している背景と、「突然閉園」を告げられた保育士や保護者が経営者に立ち向かった事例を、筆者の経験から紹介していきたい。