来年に迫る保育園の「2025年問題」 需要ピークアウトで「突然閉園」急増の恐怖!
保育園の需要ピークは2025年
「突然閉園」は、少子化が進行していく今後、保育業界全体に広がっていくことが予想される。 厚生労働省の調査では、保育所の利用児童数のピークは2025年になる見込みとされている。(出典「保育所を取り巻く状況について」厚生労働省子ども家庭局保育課、2021年)この調査によると、「人口減少の影響により、域内の保育所等の多くが定員割れを起こし運営の継続が困難となっている」のは、「自治体全域において生じている」が3.2%、「自治体内の一部地域において生じている」が13.3%だった。つまり、現時点ですでに、運営の継続が困難な保育園が増えているということだ。また、ある保育経営コンサルタントによれば、全国平均で見たとき、保育園の需要ピークは2021年で、すでに下り坂だという。 こうした情勢を受けて保育業界では、これから「保育園が淘汰される時代」が到来するとし、「選ばれる保育園」になることを目指して、独自の保育を打ち出す保育園が増えている。 しかし、「淘汰」という言葉は、保育園のビジネス至上主義や、猶予を与えずに突然閉園することを正当化している気がしてならない。たとえ人数が減って利益が減ったとしても、子どもたちを預かっているのであれば、そう簡単に保育園を閉じて良いはずがない。保育事業者には本来、利益にならなくても、子どもたちが十分な保育を受けられ、職員たちが安心して働ける環境を守る責任があるのではないだろうか。
自治体では「突然閉園」を止められない
行政は、この現実にどのように対処しているのだろうか。閉園に関する規制は、決して強いものではない。私立の認可保育園の閉園(児童福祉法では「廃園」)・休園については、都道府県知事の承認さえ得れば良く(児童福祉法第35条第12項)、閉園までの手続きの猶予期間について定めがないため、突発的な閉園を容易なものにしている。公立の認可保育園の場合は、廃園・休園するには、都道府県知事への3ヵ月前までの届出が必要と定められているため(同法第35条第11項)、民間事業者よりは強い規制がかかっている(なお、東京都は独自に、民間の認可保育園にも3ヵ月前までの書類提出を定めている)。 利用定員6人~19人の小規模認可保育園の場合は、市町村長の承認さえあれば良く(第34条の15第7項)、やはり期間の定めはない。 そして、認可外保育園については、自治体の承認さえ必要ない。閉園後1ヵ月以内に都道府県知事へ届ければ良いとされている(同法第59条の2第2項)。 つまり、経営者が保育園をいきなり投げ出そうが、ほとんど「野放し」状態なのだ。国が福祉を民間に「丸投げ」し、社会保障費を削減してきたことに加え、規制緩和によってビジネス化を進めてきたことの結果である。 決して強くない現行の規制すら守らずに「突然閉園」を強行したケースもある。 2020年10月、千葉県印西市にある小規模認可保育園を、わずか2週間後に閉園すると、運営会社の社長が保護者や職員に通知してきた。市は、子どもたちの転園も決まっておらず、閉園は認めないと運営会社に通告。しかし、会社は保育園の鍵を付け替えて、誰も園に入れないようにすることで閉園を強行した。職員の荷物も、園児たちの荷物も園の中に置かれたままの状態でである。 市が閉園を承認していないので、これは児童福祉法34条違反に当たる。しかし、ここまでやっても、会社には特に罰則がないのが現状だ。市は認可取り消しの行政処分を行ったが、すでに閉園した会社にとって実質的な影響はほとんどない。無責任に保育園運営を放り出して逃げてしまうことが、まかり通ってしまったのだ。