来年に迫る保育園の「2025年問題」 需要ピークアウトで「突然閉園」急増の恐怖!
儲からなければ、即「閉園」!
「突然閉園」の背景には、保育業界において特に2000年以降、「ビジネス化」が押し進められてきたことが挙げられる。その公益性の高さから、もともと認可保育園の設置は市町村・社会福祉法人のみに認められてきた。しかし、それだけでは需要に追いつかないとして、2000年に株式会社の参入が解禁された。さらに、待機児童対策のため、その後も規制緩和は進み、国が株式会社の参入を促してきた。その結果、確かに保育園の数自体は増えたが、一方で、保育の質を考えない、利益目的の保育園が増えたのも事実だ。 保育のビジネス化を象徴するのが、業界最大手の日本保育サービスが、2020年度、東京都内を含む全国で5園の一斉閉園に踏み切ったことだ。さらに、2021年度末に4園、2022年度末にも1園を閉園し、わずか3年で10園が立て続けに閉園されている。 そのうちの一つである沖縄の保育園は、2020年の終わり、年度途中の12月末という中途半端な時期に閉園された。関係者から私たちのユニオンにも相談が寄せられたが、保護者に閉園が伝えられたのは、わずか3ヵ月前のことである。保護者は、そこから新たな預け先を探さなければならず、仕事をしながらの保育園探しがかなりの負担であったことは想像に難くない。また、子どもたちにとっても、せっかく仲良くなった先生や友達がいるにもかかわらず、いきなりその関係を断ち切られてしまい、精神的に不安定になるなど影響が大きかったという。もちろん、そこで働いていた職員も異動を余儀なくされた。保育園を「潰す」ということは、様々な人や職場、地域社会、ケアのあり方に大きな影響を与える一大事であり、「赤字になったので閉園」と簡単に済ませられるようなことではない。 しかし、「日本保育サービス」を傘下に抱える「JPホールディングス」は、2020年6月以降の新経営体制のもと、保育園運営の新たな経営方針の一つは「選択と集中」だと宣言している。ケアの社会的責任を負う大企業でありながら、公然と利益追求を優先するという方針を発表した直後、次々と保育園の閉園を公表し、実行に移したのである。 先述した新潟県柏崎市のこども園も、現在こそ閉園を撤回したものの、当初説明されていた閉園理由は、実は日本保育サービスに近いものであった。経営者は閉園理由について、「来春の卒園児に対し、入園児が少なく、少子化で今後も減る見込みであることや、在園児が卒園するまで存続させたときの経費などを考えると、23年度末の閉園がベストだという結論に至った」(新潟日報より引用)と説明した。 福祉の必要性から保育園運営を考えるのではなく、コストカットを優先させ、儲からなければ即座に「潰す」という論理を、保育経営者が当然のように語る状況は、いまや珍しいものではなくなった。