「湾岸タワマン生活」強制終了…世帯年収1,200万円・人生を満喫する「子のいない30代パワーカップル」、余裕のローン返済のはずが急転直下のワケ【FPが解説】
いままでの家賃と同等の住宅ローン
早速、不動産めぐりを始めます。不動産会社の営業の人から、住宅ローンについて説明がありました。住宅ローンの返済額の目安は、年間返済額が世帯収入の15~20%、総支払額が購入資金の65~80%、返済期間は30~35年が一般的です。ただし、目安だけを基準に決めるのではなく、自分に合ったプランや返済方法を選んだほうがよいとのことです。 説明を聞いたAさん夫婦は、いままでも家賃25万円の賃貸マンションに住んで余裕があったため、世帯年収の20%、月20万円の返済なら楽勝、むしろ月30万円の返済でも問題なさそうだと思いました。諸経費等は頭金として、貯蓄(500万円)を全部出します。貯蓄はまたすぐに貯めればよい、家をランクアップさせることで生活をより充実させようと「1億円借りられる金融機関を探してくれないかしら?」と担当者に懇願します。不動産会社の営業担当者も自分の成績につながるため、ペアローンできる金融機関を探してきてくれました。 〈Aさん夫婦の住宅ローンプラン〉 借入金額 1億円 返済期間 35年 金利 変動金利+ペア一般団信上乗せ(0.64%) 保障 ペアローン限定ペア団信 借入時 35歳以上 毎月の返済額 26万5,819円 余裕のローン返済のはずが… Aさん夫婦は念願の湾岸タワマンを購入し、新生活を始めます。毎月の支払いはペアローンを組み、管理費等の諸経費を含め約30万円に抑えることができました(住宅ローンとは別に管理費が1万5,726円と修繕積立金が1万2,305円で約3万円※)。 眺望もよく、毎日がホテルに宿泊する記念日のような生活を送ることができました。しかし充実した生活も束の間、妻の外資企業で突然のリストラがあり、妻もリストラの対象になっていました。 さらにAさんも友人とスノーボードに出掛けた際、衝突し足を複雑骨折したのです。Aさんは働けないあいだ、健康保険から傷病手当金をうけることになりましたが、いままでの給与全額が保障されるわけではなく、給与の3分の2程度の額となります。さらに入院費や生活費以外の予定外の出費などがかさみ、夫婦は窮地に追い込まれました。 頭金としてAさん夫婦は貯蓄をすべて出してしまったため、想定外のできごとに住宅ローンが重くのしかかるだけでなく、生活費も不足してしまいます。仮にAさんが休職中でなければ、妻は若くてキャリアもあるため、新しい仕事が見つかるまでの期間を耐え抜けば家を守り抜ける可能性もあったかもしれません。しかし、Aさん自身の分はなんとかなっても、妻の分までカバーできない状況となってしまいました。