アルマーニの知られざる6の真価とは?
アルマーニの真価①【ジャケットの構造を解体・再構築し、ファッションの次元に昇華】
1970年代にアルマーニが登場するまで、ジャケットはクラシックなドレスウェアの厳格なルールに縛られていた歴史がある。アルマーニ氏にとって既存のジャケットは「誰が着ても同じに見えてしまう、自分らしい装いを妨げる元凶」であった。そこで同氏は、ジャケットの構造をすべて解体し、着た人がより自由に動けるように再構築。ミラノ大の医学部生時代の解剖学の知識もあり、ジャケットの解剖は実に見事かつ大胆にやってのけた。硬くて重い生地を軽やかで落ち感のある生地に変更、そして肩パッドや芯地を取り除くことにより、いわゆる「アンコンストラクテッド・ジャケット(アンコンジャケット)」を考案。そして、ワイドショルダー、細身のラペルや大胆に絞ったウエストラインを採用し、ジャケットのデザインを根底から改革。俳優やアーティスト、作家、建築家といったクリエイティブな職業の男性達が、アルマーニの提案にいち早く飛びついた。 編集部 三井「クラシックスタイルの信奉者として知られる落合正勝氏は著書「クラシコ・イタリア礼讃」のなかで度々「アルマーニはモードの中でも別格である」と語り、認めています。規定のルールや型を最重要視しているためモードには批判的な立場をとることが多いクラシコ・イタリア派も認めざるを得なかったのは、アルマーニが不必要と考えた要素は大胆に排除しながらも、従来のクラシックウェアを正しく理解し本質から逸脱しなかったからだと考えます。まさにジャケットやスーツの世界において「守破離」をやってのけたと言っても良いかもしれません。時代のニーズを巧みにキャッチし、それをカタチにするべく業界のルールや常識を打ち破ったアルマーニ氏の偉業は計り知れません。」 編集部 安藤「1980年代以降は、アルマーニ以外のブランドでも柔らかい素材を用いたスーツが格段に増えています。それは私が好きな古着屋で当時の商品を見ても明らかです。アルマーニがスーツにもたらした革命のインパクトは大きく、他ブランドにまで波及していたということです。」