なぜマー君はNYでも不敗神話を守れるのか
なぜ制球が乱れたか
7回、カウギリをフルカウントからのスプリットでスイングさせると、ベンチからジラルディ監督が出てきた。球数は108球。勝ち投手の権利を持たないままマウンドを降りた田中に拍手が起きた。1点差。5安打で2失点のクオリティスタートを守ったピッチング内容を目の肥えたヤンキーファンから評価された。 その裏、テシェイラのアーチで同点に追いつき、田中の負けを消すと8回裏には、相手のワイルドピッチで決勝点をプレゼントされた。 現地時間、27日のヤンキース vs エンゼルス戦。田中のレギュラーシーズンの不敗神話は「31」のまま途切れなかった。「僕はリードを許した状態でマウンドを降りて、逆転を祈っていたので勝てたことがうれしいですね」 4回まで、毎回、四球を与えた。メジャー5試合目にして、制球は最も不安定で、“苦しいときのスプリット”という単純な配球にもなった。田中自身は、その理由を「今日はリズムが悪かったと思うし、攻撃のリズムも生まれないと思う。自分の中で、その理由は、はっきりと分かっている。ここでは言えないが、次までに修正したい」と明らかにしなかった。 メジャーの解説者で、元中日の与田剛氏は、制球の乱れた理由を、環境の違いと心理、エンゼルス打線の対策にあったと見ている。 「ピッチングフォームに関しては、特別に何か問題があるように見えませんでした。ただ初めての中4日登板で、試合開始時間は、午後8時スタートでした。ピッチャーというのは、試合開始時間が、1時間違うだけでリズムなどが変わるものなんです。その影響もあったのでしょう。またレッドソックスもそうでしたが、エンゼルス打線も、追い込まれるとスプリットがあるので、田中対策として積極的に早いカウントから仕掛けてきました。それに対して、田中投手も、ボールゾーンを意識的に使っています。そうなると、当然、ボールが増え、球数が増えます。カウントでボールが先行するとコントロールミスが起きるリスクが増えます。また相手のピッチャーが良かったですよね。田中は、『今日は点を与えられない』と考え、さらに制球に気をつけ、ボールになるケースが増えたのではないですかね。そういう心理的な影響もあったと思います。それでも途中で肘の位置を修正したり、対応をしていました。走者を出しながらも、気持ちを切らずに大量失点にはしませんでした。集中力でしょうね。2失点で粘れば、負けないという展開にもつながります」