「一律給付」はなぜ必要か──「まちかど金融危機」を防げ
緊急経済対策の「ゴール」
今回の緊急経済対策の中身を評価するときに、考えなければならないのは、何をゴールとするかです。 新型コロナウイルスの感染拡大がいつまで続くかはわかりませんが、半永久的な状況とは考えづらいですよね。仮に半年後、感染が収束傾向を見せました。さあ、ふだんの経済活動に戻りましょうというときに、ふだんどおりの経済活動を担う経済主体が存在するのか。というのが大きな問題なんです。 売上が減っても、借入金の返済や家賃の支払いはあるわけです。感染を抑制しているあいだに、ビジネスが立ち行かなくなったり、諦めて廃業せざるをえなくなるということが起きる。そうなると、いざ経済をリブート(再起動)しようとしても、リブートする主体がない。これがいちばん怖い事態なんですね。 ──そうすると、給付のスキームは本来どのようにすべきとお考えですか。 誰が「被害者」か、線引きが難しい状況では、対象を絞り込むのではなく、一律に給付する必要があります。課税収入にして、来年の確定申告または年末調整で、沈み浮かびを調整すればいい。「仮払い事後精算」型のシステムが望ましいと考えています。 ──一律給付を主張する専門家は他にもいますよね。いちばんシンプルなやり方だと思いますが、なぜ通らないのでしょうか。 それは……謎なんですよね。なぜ一律給付・所得扱いにしないのか、正直私にもよくわからない。 家計への給付についてもあまりにも対象を絞りすぎている。住民税非課世帯やそれに準ずる世帯を中心に1世帯30万円が給付されることになっています。しかし、今回のショックについては低所得者だから被害が大きいかというと、そういうわけでもない。なんらかのかたちで雇用されていて、家賃や光熱費などの固定費が低く抑えられていれば、意外と困っていないかもしれない。 むしろ私が心配しているのは、年収400~500万円ぐらいの、中堅・中小企業に正社員として勤務しているといった家計です。家族がいればそれなりの家に住んでいるでしょう、家賃または住宅や車のローンを抱えているかもしれない。彼らは所得基準だと到底今回の給付金の対象にはならないんですが、仕事が激減してもローンの支払いはやってきます。十分な給付を受けられないことによってローンを払えない人が出てくる。追い立てをくったりすれば、下手すれば家庭崩壊の危機です。 ──その層は雇用調整助成金ではカバーできないんですか。 まさに、線引きの難しさはこういったところにも表れるんですが、もちろんカバーできる人はたくさんいると思います。ですが、中には、たとえカバーされても、それに加えて十分な給付がなければ、固定費の重みに耐えられなくなる人が出てくるということなんです。 雇用調整助成金は、休業手当(給料の6割以上)の6~9割を助成するものであって、上限は8330円。家計の状況によっては、きつい人たちが出てくる。 だからこそ、やはり一律給付が必要で、「仮払い事後精算」がいいんですよね。