「一律給付」はなぜ必要か──「まちかど金融危機」を防げ
──では、評価できないところは。 やはり給付のスキームです。(政策立案者は)なぜ給付が必要なのかを理解していないのではないか。給付金を景気対策の一種か何かと間違えているんじゃないかと思います。 いま起きていることは、一般的な不況というよりも、自然災害に近い性質を持っています。新型コロナウイルスで売り上げがなくなったり、失業したりした人たちは、自然災害に罹災した人たちと同じような立場にあるわけです。 一方で、自然災害と大きく違うところもあります。東日本大震災のときは、誰が被害者で誰が被害者でないか、かなり明確に線引きができました。今回はそれが難しい。「観光」「飲食」「イベント」と言われていますが、スポーツジムや学習塾など、ほかにも大きい被害が出ています。個人宅に業者が立ち入るのを避ける人が増えたことで、リフォームの延期やキャンセルが増えているという話も側聞します。 今回の「コロナショック」は、自然災害に非常に近い性質を持ちながら、同時に、被害者の特定が極めて難しいという特徴がある。 景気対策であれば、子育て世代に重点を置くとか、低所得者に手厚くするというのはわからなくはないんです。そういった人たちは消費傾向(もらった金額のうち消費にまわす割合)が高いので。 だけど、今回の給付は景気対策ではありません。じゃあなんのためにやっているかというと、どんなにがんばって融資のスキームを作ったとしても、その対象からはずれてしまう人がいる。そういった人たちのための「受け皿」なんです。 ──それは具体的にはどんな人ですか。 開店まもないお店や、業態やビジネスの手法を大きく変えた人たちも、前年度の所得がなかったり、逸失利益の証明ができなかったりします。 あるいは、ごくごく零細であったり、副業であったりすることから、これまでまじめな税務申告を十分に行ってこなかった人たち。それ自体はよくないことですが、そういったビジネスはどうしても制度の枠内におさまらない。 例えば、個人的なツテで家庭教師を複数かけもちして生活している人で税務申告していないという人もいるでしょう。これも言いにくいですが、これまで正直に利益を税務申告していない店舗もあるでしょう。でも、その人たちも重要な経済活動の担い手なんです。