「ヤバイ会社」を実名批判! 武富士、アムウェイ、ビッグモーター…ジャーナリストによる良書(レビュー)
会社がヤバい――なんて話は、カイシャ真理教が国教のこの国でも今や周知の事実。ただ、周知の具合には濃淡があって、老若で言えば若ほど、男女で言えば女ほど、会社のヤバさをよく知ってるし、逆に、若くなければ女でもないおっさんほど会社信仰が抜けきらない。 ゆえに、おっさんがメイン読者であるビジネス書には会社のヤバさを啓蒙してくれる快作が多々あって、たとえば『投資レジェンドが教えるヤバい会社』だったり、『ヤバい会社の餌食にならないための労働法』だったり。そういう良書の列に新たに加わった一冊がコレです。 タイトルや表紙は実話マンガっぽいし、本文も若い世代の口語が混じる令和軽薄体ながら、版元は東洋経済、著者は元日経新聞編集委員。つまりはニッポン経済メディアのどエスタブリッシュメント2者によるタッグのような座組みで、語られる中身がいちいち、まっとうなのよ。 ヤバいと名指しされる会社は多士済々で、武富士、アムウェイ、ビッグモーターに始まりジャニーズ、吉本を経て、エネオス、郵政、三井不動産、東京海上、損保ジャパン、電通、トヨタ、その他いろいろに至る、新旧硬軟取り混ぜたオールブラックス・ジャパン。 これだけ並ぶと、1社あたりへのツッコミは浅く、見知った話が繰り返されるだけなんじゃないの? と誤解されそうだけれど、評論家による印象批評なら各社からすぐ訴えられる今日このごろ。そうなっていないのはこの本の軸がジャーナリストによる報道で、取材にもとづいた端的な指摘が続くから。 企業批判が政権批判と同様のタブーになるなか、遠慮忖度なしでよくぞここまで! と、読中読後、溜飲が下がりまくること請け合い。さらには、書き手の的確な組織観・人間観に見合ったヤバくない会社の数々の紹介までしてくれてるから、おっさん以外にも強くお薦めできます。 [レビュアー]林操(コラムニスト) 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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