「人の目を気にしてやめるのはもったいない」――北海道が生んだエンターテイナー・大泉 洋の50年
人の目を気にしてやめるのは、もったいない
以降、俳優としての活躍は言うまでもない。やがて司会業もこなすようになり、NHK紅白歌合戦では3年連続で司会を務め、ついに昨年、歌手として出場を果たした。生誕50周年を記念した「大泉洋リサイタル」は全国各地を巡り、今年2月に日本武道館で幕を閉じた。 「歌は子どもの頃から好きでしたね。合唱コンクールで、他の子は『めんどくせーよ』と言っているなか、真剣に歌ってる男子。人前で歌うようになったのは20代。TEAM NACSの舞台で、『ナックスハリケーン』という歌を作った。『ハーリハーリハリハリケーン』って歌(笑)」 それから20年以上にわたり、数々の楽曲で作詞・作曲を手がけ、音楽活動を続けてきた。しかし楽器の経験はほとんどなく、鼻歌で作っているという。 「たぶん誰でも曲は作れるんだと思うんですよね。だって僕ができてるんだから(笑)。ただクオリティーは違う。NACSメンバーは僕以外みんな楽器ができるから、作曲のレベルが違うんです。彼らが作る曲を聴いてて、もう僕ががんばって作曲までする必要はないなと思いましたね」 音楽活動を本格化させるにあたって、北海道出身の2人に自ら依頼した。曲を玉置浩二が手がけ、自身が詞を書いた「あの空に立つ塔のように」と、GLAYのTAKUROが作詞・作曲した「ふわり」の2曲。どちらも北海道に根差し、自身の来た道をたどるような楽曲だ。
リサイタルには娘も訪れた。 「この間、娘がブルーノ・マーズを見に行って。僕は福岡にいたから、メールで『どうだった?』と聞いたら、『めっちゃかっこよかった』と。冗談で、『大泉リサイタルよりも?』と返すと、『でもパパのほうが面白い(断然)』って返ってきました(笑)。まぁブルーノは笑かしに来てないけどね(笑)」 リサイタルでは、自身の曲も歌えば、昭和の名曲もマイケル・ジャクソンも歌う。MCでしゃべり倒し、『水曜どうでしょう』の藤村・嬉野ディレクターと制作した映像が流れ、会場は爆笑の渦に包まれる。大泉の集大成ともいえるエンターテインメントショーだ。 「突き詰めると、僕にはやりたいことが特にあるわけじゃないんですよね。人を楽しませたい、それしかない。その手段として何があってもいい。そして、人の期待に応えたいんですよね。『大泉さんには早くないですか』というお仕事でも、オファーしてもらったからには『やっぱり頼んでよかった』と言ってほしい」