「人の目を気にしてやめるのはもったいない」――北海道が生んだエンターテイナー・大泉 洋の50年
31歳の時、芸能事務所「アミューズ」と業務提携し、本格的に全国進出することを決める。大泉はアミューズに「ブレイクさせないで」と伝えた。 「その時の不安は、一つは東京でも売れちゃったら道外でも不便になるのかなぁということ。なぜか売れる前提で考えて、危惧してました(笑)。北海道では、若かったからか、彼女と歩いていてもブワーッと囲まれたりしたんですよ。でも道外ではそんなことにはならなかったからね。もう一つの不安は、パーッと売れて、スーッといなくなること。目標はこの仕事を長く続けることだけ。勇気もなければ野心もない。本当、魅力のない男なんですよね。ブレイクするような売られ方して、一瞬で終わってしまうのは怖かった」 北海道の仕事を手放すことは全く考えなかった。今に至るまでレギュラー番組を持ち、東京と北海道を行き来する生活を続けている。 「ここまで北海道によくしてもらって、やめる気はない。あと、当時は変なプライドがあった。いつまでも北海道のローカルタレントでいたい。異質な存在でいたかった。だから新人の登竜門みたいな人気番組のオファーも断ってましたね。それをやると、東京の芸能人になって、他の人と一緒になってしまう、みたいな。今は流石に自分がローカルタレントではなくなってしまったとは思うけど、それでも、北海道の人が自分をどう見ているかは常に気にしますね。北海道の人たちに『大泉、いい仕事してるね』と思われたい」
バラエティーの仕事なら見つかると言われたが、東京では俳優業に専念した。 「北海道では役者の仕事がないんですよ。『(東京で)あなたの役者としてのキャリアを知ってる人はいない』と言われたんですけど、ちっちゃい役もやりたくなかった。北海道の人が見たらがっかりするから。『じゃあどうすんだよ』みたいな感じだったけど、どこか楽観的なところがあって、『でもそのうちいい仕事が来るような気がするんですよねぇ』みたいな(笑)。すると本当に程なく『救命病棟24時』という大ヒットドラマのシーズン3にレギュラー出演が決まって。仕事だけはなぜか、いいようになるとしか思ってないんですよね」