「人の目を気にしてやめるのはもったいない」――北海道が生んだエンターテイナー・大泉 洋の50年
50歳を迎えた大泉 洋は、「北海道おじさん」と自らを語る。大学生の頃、ローカル番組に出たことから始まったキャリアはどんどん広がり、今や俳優、バラエティータレント、司会、歌手……と縦横無尽に活躍する。人見知りで高望みしない性格だという大泉は、どう今に至ったのか。人生の挫折、運命的な出会い、全国進出、そして娘のために生きる現在――よどみなくしゃべるうち、大切にしてきたものがいくつも浮かびあがった。(文中敬称略/撮影:吉場正和/Yahoo!ニュース オリジナル RED Chair編集部)
娘のためなら死んでもいい
「今までも幸せだなと思って生きてきたけど、娘と妻といる瞬間がこんなにも楽しくて、こんなにも幸せだなと思う自分がいるとは思わなかったですよね。娘が安心できるまでは死ねないし、彼女のためならたとえ自分は死んでもいいと思う。今後はこの人がちゃんと生きていけるようにするのが自分の仕事なんだと。それだけでいいやと思うようになりましたね」 12歳になる娘は、「僕の人生をとんでもなく変えてくれた」と言う。めまぐるしい日々のなか、家族や両親との時間を大切にしている。30代で上京するまでは実家暮らしで、今も北海道に帰ると「中学生の頃から変わらないレイアウト」の自室で過ごす。 「じいさんが亡くなった時に、ロケで死に目に会えなかったんです。最期に一緒にいてあげられなかったという思いがでかくてね。もうこの後悔はしたくない。うちの親はありがたいことに元気だけど、2人とも86歳だからね。最近怖いなと思うのは、2人がいなくなった時に、大丈夫かなって。悲しみに耐えられなくて変なことにならなきゃいいけどなぁ……。それぐらい僕は、親とか身内に対して甘えてる部分が大きいんじゃないかな」
「身内」の範囲はわからないが、深く長い縁が大泉の魅力につながっている。バラエティー番組『水曜どうでしょう』(北海道テレビ、以下HTB)に始まる北海道のスタッフ、大学時代から続く演劇ユニット「TEAM NACS」……。いずれも30年近い付き合いだ。 「結局、人見知りなんですよ。だから、出会って仲良くなった人と別れたくない。北海道の番組で一緒にやってきた人たちと、ずっと一緒にいたい。TEAM NACSも、彼らがいなかったら今の僕はいない。1年振り返ってやっぱり死ぬほど笑わされるのはあの人たち。彼らを前にしては言えないけど、本当はもっともっとばかみたいに仲良くいたいですね。5人で旅行したっていいぐらい」