世界有数、育成超名門責任者に聞く“選手の育て方”とは? 一人ひとりに寄り添い「ロボットではなく、本物の選手」を育てる
■「遺伝」「ピッチ上での頭脳」「精神的な頭脳」「技術」「社会環境」
―――判断基準の中で特に重要視している項目があれば教えてください。 一つ目は「遺伝的な可能性」についてです。例えば非常に高いスピード能力を持った12歳の選手がいた場合、その選手がその能力を持ったまま、優秀な選手になる可能性を示す指標はたくさんあります。試合中にたくさん走れる選手であれば、そういった選手になれる可能性ですね。加えて、我々はその選手の両親や祖父母のことをよく知ることで、どのくらい成長するかを予測することもできます。 次は「頭脳」です。これは、ピッチ上の問題を監督からの指示がなくても戦術的に解決できることで、最後は11人でプレーすることにはなるけれど、もし右サイドバックでプレーした場合の1対1や2対1となった状況をどう解決するのか、というようなことです。 「頭脳」とは戦術的な部分だけでなく、精神的な部分も含まれます。例えば若い選手が試合に負けた時の感情をどう処理するのか。試合に負ければ感情的になり、泣いてしまうことがあるかもしれません。でも、それは負けず嫌いであることを意味しています。このような細かな基準を総合的に判断することで、選手のポテンシャルを見極めることができるのです。 そして全体像を把握するために、選手たちの技術的なスキルやボールを持って何をするかについても話します。チャンピオンズリーグやワールドカップの決勝を見れば、技術的なことに関して選手たちは何をしなければならないのかがわかります。 さらに、社会環境についても考えます。選手の家族はどのように働いていたのか。祖父母はどうだったのか。育った地域や友人関係など…。このようなことも私たちは判断材料としています。 ―――プレースタイルや性格など、いろいろなタイプの選手がいる中で、それぞれをトップレベルに成長させるために気を付けていることはありますか? まず、アカデミーでのサッカーは個人競技だと考えています。ですから、選手一人ひとりの成長を促すプログラムが必要です。もちろん11人でプレーするわけですから、チームの一員となるためのスキルアップも必要ではあります。