世界有数、育成超名門責任者に聞く“選手の育て方”とは? 一人ひとりに寄り添い「ロボットではなく、本物の選手」を育てる
■ロボットを作るのではなく、自分のやり方で違いを生み出す「本物の選手」を育てている
―――『ラ・ディアゴナル』はクラブが注力して完成したプロジェクトです。数年経ってのインパクトはいかがでしょうか? このプロジェクトの完成はとても大きな一歩です。選手たちの教育や価値観の共有について、皆さんにもお話しすることができていますからね。このプロジェクトでは、すべての教育者、すべての教師、すべてのコーチが同じ建物に住み、食事も一緒にして、常に情報を共有しています。以前は宿舎や学校、コーチの住まい、オフィスなどが別々でしたが、今はすべてが一緒なので、何も離れることはありません。私たちも選手の成長をより感じることができます。フィットネスセンターや医務室もあるので、そこへ通う時間を取られることもありません。一方で、常に監視下に置いているわけではなく、選手は自分の部屋もあるし、パーソナルスペースもある。これまでとすべてにおいて大きな違いがあり、現時点でこれ以上の施設はないと思います。 ―――具体的に改善された数字はありますか? 数字の指標で言えば、例えばプレー機会がありますね。2020年以降、トップチームデビューをした選手が20人います。モナコで14人、提携クラブであるベルギーのサークル・ブルッヘで6人です。これは驚異的な数字です。また、アカデミー選手のプレー時間の割合は2020年が全体の9%だったことに対して、現在は14%まで上昇しています。影響力が大きくなっていますし、その状態を維持していきたいと考えています。それには採用や陣容で良い仕事をしないといけませんが、特に会長やCEO、スポーツダイレクターが、若くて良い選手にプレーしてほしいと望むポリシーを持っていることが大切です。クラブが若い選手と戦っていくと決断してこそ、私たちの仕事ができ、成功することができるからです。 ―――今後のアカデミーとしての目標は何でしょうか? 重要なことは、選手が自分自身を表現する機会を与えることだと思っています。個人的に大きな学びになりますからね。そして、私たちのアカデミーでは、入ってきた良い選手は、良い選手であり続けなければなりません。その資質を持っているからです。ただ、その資質をピッチで表現することは、教えることだけではできません。それを示すことが必要です。選手が自分自身を表現できるようになれば、何か魔法のようなこと、何か違うことを表現できるようになると思います。私たちはロボットを作るのではなく、生身の人間から、自分のやり方で違いを生み出す「本物の選手」を育てているんです。モナコのアカデミーに加わったどの選手にも重要なことは、自分たちがどれだけ良い選手で、自分たちがどういった存在かを世界に示すことです。私たちはクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシを生み出すことはできません。それが私たちの選手たちであり、私たちは彼ら自身としての最高の選手になることを望んでいます。そうすれば大丈夫です。
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