動いた”番長”と鎮めた矢野監督…なぜ横浜DeNAは阪神に逆転勝利できたのか…徹底された打撃戦略と一体感の明暗
開幕から9連敗にあった泥沼の阪神に5日、初白星を献上したのが横浜DeNA。先発の西に完封を許した。そのリベンジ戦。横浜DeNAには、明確な指針があり、その戦略は綿密で全員に徹底されていた。 鈴木尚典打撃コーチは、「内外に投げ分けているので両方追いかけないこと。打席へ入る前に狙い球、もしくはコースを絞って一振りで仕留めてほしい」との指示を出していたことを明かしたが、追い込まれて、カウントを作られてから、難しいボールに手を出すのが前回のパターン。この日は、不利なカウントになる前に狙い球をセンター中心にコンタクトしていくという西対策を全員が徹底した。 4回も先頭の宮崎が粘ってセンターフェンス直撃の二塁打で出塁すると「得点圏にランナーがいたので積極的にいこうと決めていました」という続く大和が初球を逆方向へ叩いた。 右中間を破るタイムリーツーベース。1点差に詰め寄り、なおも二死二塁の同点機に代打の藤田も2-1のバッティングカウントから4球目のチェンジアップを拾うようにしてライト前へ運んだのである。 勝ち越した5回にも、西攻略の徹底は守られていた。大田泰示が2球目をレフトに引っ張り、一死一、二塁から左中間を破る決勝のタイムリーツーベースを決めた宮崎もボールワンからの2球目のチェンジアップを芯でコンタクトしたものだった。 「チャンスの場面でしたが、後ろにつなぐ気持ちが良い結果につながったと思います」 明らかに西の出来も悪かった。ボールが浮き、変化球に、いつものようにベース板の両サイドを幅広く舐めるようなキレがなかった。なおのこと横浜DeNAの戦略がはまった。 試合後のZOOM会見で三浦監督は「流れを変える」という言葉を何度か使った。 追う立場であるから当然の采配かもしれないが、ベンチが意図的に野球を動かした。
先発のロメロを「内容がよくなく嫌なホームランを(佐藤に)打たれた」と2回で見切りをつけて、早々と代打を送り、同点にした4回には、先発マスクをかぶらせた8番の山本祐大に嶺井博希、9番に藤田と代打攻勢を仕掛けて、その藤田が期待に応えたのである。 3回から送り出された今季初登板の宮國椋丞が回跨ぎの2イニングを無失点に抑え、田中、入江大生、エスコバー、伊勢大夢、三嶋一輝と、6人で無失点リレーをつなぎ、逆転劇を演出した。 三浦監督は「リリーフ陣が踏んばってくれた。宮國が流れを変える攻めのピッチングをしてくれ、田中が流れを呼び込んでくれた」とブルペンの6人を称えたが、“番長のタクト”がチームに「流れ」と「一体感」を生みだしたと言える。 ソトの走塁ミスや、追加点の欲しい8回無死一塁から大和、田中が、走者を進めることもできず外野へ簡単に打球を打ち上げるなどの“雑な面”もあったが、それらが隠れてしまうほどの一丸ムードがベンチにあった。 一方の阪神は、どうだったか。 初回こそ一気攻撃で3点を奪い、昨季ハマスタのライトスタンド上部にある「鳩サブレ」の看板を越えていく特大の場外弾で横浜DeNAファンを震撼させた2番の佐藤が2回にロメロのスライダーを捉えてライトスタンドに飛び込む5号ソロで追加点をあげたが、3回以降は、わずか2安打と沈黙した。 横浜DeNAバッテリーにカウントを作られて得点圏に走者を置く勝負どころでクルクルとバットがまわった。4回二死二塁では中野拓夢が宮國に対して三振。5回二死二塁でもロハス・ジュニアが田中健のボール球の変化球に手を出して三振。小刻み継投で目先が変わったこともあってチームとしての狙い球も定まらず空回りしていた。戦略を全員で意思統一して徹底した横浜DeNAとは対照的だ。 象徴的だったのが1点を追う9回である。横浜DeNAのストッパーの三嶋はボールが暴れ制球に苦労していた。先頭打者の足がある代打・島田 海吏が四球を選ぶが、続く代打・梅野隆太郎のバントが小フライになった。これを三嶋が“入魂”のスライディングキャッチ。飛び出した走者を差そうと転倒した姿勢のままゴロで一塁へ送球するほどの執念を見せた。 2番の佐藤がサイクル安打にリーチをかける結果を出して全打席出塁しても打線の爆発にはつながらない。本来トップバッターの近本は3番に座り4タコに終わるなど調子が落ちてきた。オーダーの再考をすべきタイミングに来ているのかもしれない。