「固定電話は不要」の時代が遠のく? 足踏み状態が続くNTT法見直しの議論
NTT法が廃止されるとどうなる?
「携帯電話中心のユニバーサルサービス設計」であればNTT法の「見直し」に該当します。しかしNTT法の議論は「廃止」まで飛び火しています。 前述した「モバイル中心にユニバーサルサービスを再設計する」という議論に加え、様々な要因が組み合わさり、NTT法見直しの議論は「NTT法廃止」の議論へと発展しています。 そもそもNTTはNTT法により、政府が株式の3分の1以上を保有すると定められています。NTT法が廃止されると、約5兆円とも言われている政府保有のNTT株が売却可能となるため、防衛費の財源などに当てることが可能に。しかし、売却された株が外資系企業によって買い占められた場合、安全保障上の問題や、NTTの経営が海外企業に左右されるおそれがあります。 NTT法が廃止された場合、NTTは「ユニバーサルサービスとしての固定電話の提供」からは解放されますが、このように複雑な事情が絡み合っているため、簡単に廃止にはできないのが現状となっています。 ■ソフトバンクやKDDIはNTT法廃止に反対の立場を示す NTT廃止論に対し、ソフトバンクやKDDIははっきりと反対の立場を示しています。その理由は、NTTが当時25兆円ものお金をかけて、通信インフラを整備し、その通信インフラを大手キャリアも利用しており、その費用はNTTの電話加入権によって賄われています。NTT法がある限りは「国民共有の公的資産」扱いですが、NTT法が廃止された場合、他社がどう利用できるかは不透明となっています。 ■NTT法が廃止されて完全民営化された場合「電話加入権」は返還される? 仮にNTT法が廃止された場合、NTTを契約する際に必要な電話加入権を得るための「施設設置負担金」が返金されるかどうかまではまだ議論が進んでいません。しかし、ソフトバンクの代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏はNTT法廃止議論について言及した際、「当然(電話加入権を)国民に返すべきという議論もあって然るべき」と指摘しています。