田村淳さんが「虫垂炎」で緊急手術 前兆や初期症状、早期発見するには? 医師が解説
虫垂炎の前兆や初期症状について
虫垂炎では、腹痛を主訴に来院することが多いです。特に右下腹部痛が多いですが、初期は痛みの箇所がはっきりしない腹痛や上腹部痛(みぞおちあたりの痛み)から始まることもあります。 虫垂炎の炎症が腹膜にまで波及していない場合、食欲不振や悪心・嘔吐、便秘・下痢といった消化器症状のみ呈することもあります。 一方、発熱は重症例を除いて軽度であることが多いです。腹痛の原因となる疾患は様々ですが、右下腹部に強い痛みを感じる場合は、消化器を専門としている病院を受診しましょう。
虫垂炎の検査・診断
虫垂炎の検査では、身体検査・血液検査・画像検査を行うことが多いです。身体検査では、腹部全体の触診のほか、虫垂炎に特徴的な所見を診察します。 例えば、右下腹部のある1点を押すと強く痛んだり(マックバーニー圧痛点)、体の左側を下にして横向きに寝ると、痛みが強くなったりします。また、腹膜まで炎症が広がると、痛みのある箇所を押そうとすると腹壁が非常に固くなることもあります(参考文献1)。 血液検査では、好中球増加を伴う白血球上昇、炎症を示すCRPという蛋白質の上昇が見られます。 ただし、これらの所見は虫垂炎以外の多くの疾患でも見られるため、血液検査のみで虫垂炎の診断をつけることはなく、発症時期や経過を考えるのに活用します。また、妊娠可能性のある女性では、妊娠の除外のために妊娠検査を行うことがあります。 画像検査は、超音波検査、腹部CT検査などを行うことが多いです。その中でも、虫垂炎診断に最も有用な画像検査はCT検査で、他の疾患との鑑別や手術前の評価にも役立ちます。CT検査では、虫垂の腫れや炎症の広がり、虫垂が破れていないかなどを確認しています。
虫垂炎の治療
虫垂炎の治療は、抗菌薬と絶食による保存的治療と、手術による虫垂の摘出があります。 炎症が比較的軽度なカタル性虫垂炎と言われる病態では、保存的治療のみで軽快することも多いです。 ただし、再燃する可能性はゼロではなく、再燃した場合は手術が必要になる場合があります。 手術は開腹手術、腹腔鏡手術があり、近年は低侵襲の腹腔鏡手術が行われる事が多いです。手術が必要と判断された場合、受診後数日以内に手術が行われることが多いですが、穿孔しており菌血症や敗血症が疑われる場合は緊急手術することもあります。 また、最近は手術が必要と判断されたときも、最初に抗菌薬を投与する、または膿や液体を取り出すドレナージ術のみ行って、炎症が落ち着いてから待機的・計画的に虫垂切除を行う場合もあります。