C大阪の大久保嘉人が挑む開幕4試合連続ゴール記録の価値とは?
2度目はブラジルワールドカップ出場を決めていた、ザックジャパンのメンバー入りへの待望論が高まっていた2014シーズン。開幕直後の3月15日の大宮戦からFC東京、名古屋グランパス、徳島ヴォルティスの4試合で5ゴールをマークした大久保は、2010年の南アフリカ大会に続くワールドカップ出場をへて、このシーズンも最終的には18ゴールをあげて連続得点王を獲得した。 翌2015シーズンも得点王を獲得するなど、稀代のゴールゲッターとして歴史に名前を残した川崎時代に大久保が繰り返していた言葉がある。それは「シュートを打てば入る」であり、さらには「パスが来た瞬間に、腹の底から『よっしゃーっ』という声が響きわたってくる」だった。 そして、今シーズンから15年ぶりに復帰したセレッソで、開幕から大久保が発している言葉をあらためて振り返ってみると、2つの言葉に共通した感覚が芽生えていることがわかる。 古巣・川崎のホーム、等々力陸上競技場に乗り込んだ3日の第11節。ACLが控える関係で前倒しされた一戦の開始わずか5分に、大久保はペナルティーエリア右角の後方、約20mの位置から意表を突くミドルシュートを一閃。ボールはループ気味の緩やかな軌道を描きながら川崎の守護神チョン・ソンリョンのタイミングをずらし、さらに必死に伸ばした右手の先を越えてゴールに吸い込まれた。 「時間帯が早かったので、とりあえずゴールの枠内に飛ばそう、という気持ちで打ったら、ボールがブレて飛んでいった」 試合後に明かした先制弾の舞台裏は、川崎時代の「シュートを打てば入る」に通じている。さらに同じく古巣のFC東京との前節でマークした、前半14分の先制ゴールは絶好調時に腹の底から響きわたってくる大声と、濃密な経験が瞬時に融合されて生まれたものだった。 敵陣の中央やや右寄りでMF坂元達裕がボールをもった瞬間、大久保はFC東京の右サイドバック中村帆高の死角となる背後で気配を消していた。ポジション的にはオフサイドだったが、坂元が縦パスを入れる刹那に一度戻り、さらに急旋回しながら中村の目の前を横切ってゴール前へ抜け出した。 「タツ(坂元達裕)がボールをもったときに自分はファーサイドにいたんですけど、タツが蹴る瞬間にディフェンスの前に入って、キーパーとの間で合わせようと思ったら、本当にいいボールが来た」 虚を突かれた中村はまったく反応できない。おそらくは心のなかで「よっしゃーっ」と叫んでいた大久保は走り込みながら、山なりの緩やかなパスが落ちてくる落下点を冷静に見極めていた。 「あそこでボールを頭にしっかり当てると、おそらく外すという思いがあったので。どうにかしてちょっとでも触って、ゴールに吸い込まれればいいな、と。本当にその通りになりましたね」 ダイブしながら頭の先にわずかにかすらせ、コースを微妙に変える巧みな一撃に、FC東京のキーパー波多野豪もなす術がなかった。FC東京戦後にはメディアからこんな質問が飛んだ。 「調子がいいときに、例えば野球だと『ボールが止まって見える』といいますが――」