WWEの元構成作家が語るビンス・マクマホン、言葉の暴力や性差別「生きるか死ぬか」の日常
別の元作家は、女性として働くことに危機感を覚えたため辞職
WWEのライタールームにいた女性作家はとくに辛い目に遭わされた。ローリングストーン誌が取材した元作家の女性は、男性作家の立ち居振る舞いから自分がよそ者扱いされていたと感じ、女性であることをことさら意識するようになったそうだ。そのうちの1人は周りからよく服装について言われ、不必要に身体を触られていたという。あからさまに性的な接触ではないにしても、自分を手玉に取る手段としてやっていたと感じたそうだ。男性作家に対してはそういう接触はなかった。 「近くに来させようと身体を触ってくるんです」とその女性作家は言う。「腰に手を回して引き寄せ、あっちに行けだの近くに来いだの言うんです。お尻に近い位置だとすごく気になりますよね。普通は腰に手を回したりしません。『これって変だわ』と思いました」。 ローリングストーン誌が取材した元女性作家のうち2人は人事部に苦情を申し立てたという。そのうち1人はその後解雇されたが、本人は苦情への報復だったと解釈している。元作家陣によると、2020年にはあまりにも多くの女性作家がWWEの人事部に苦情を申し立てたため、会社は「女性フォーラム」と題したZoom会議を招集した。被害を受けた作家は、会議で一気に怒りを吐き出すよう促された。ある女性作家は感極まりながら、同僚と一緒に仕事をしていて心が休まらないと会議の場で語ったという。同じ会議に出席していた別の女性によると、管理職の社員は女性陣の訴えを一蹴したそうだ。「私たちをなだめるための会だったんです。本気で取り合ってはもらえませんでした」。 ローリングストーン誌が取材した元作家によると、Zoom会議後には構成作家全員を集めた対面会議が行われ、管理職の人間から「お前たちは中学生みたいなふるまいをしている」と言われ、今後問題があっても人事部に行くなと命じられたそうだ。 男性社員の1人は、「『問題があったら俺に言いに来い』的なことを言いました」と元作家は語る。「ふざげてますよ、だってその社員が問題の一端なんですから。彼がビンスを好き放題にさせていたんです」。 不安症の発症歴があるという元作家の1人は、WWEで働いていたせいで精神疾患が悪化したという。その作家いわく、仕事が原因で「深刻な」パニック障害になったそうだ。そうした不安を人事部の人間に相談したが、フォローは何もなく、対策も一切講じられなかったそうだ。 「人事部に行って、『不安を抱えています。もう耐えられません。死にそうです』と相談しました」とその作家は語った。「まったく取り合ってもらえませんでした」。 別の元作家は、女性として働くことに危機感を覚えたため辞職したという。他の作家が女性レスラーの身体や服装についてとやかく言ったり、「過度に性的アピールをしていないレスラーに対しては」揶揄するのを聞いて、気分が悪かったそうだ。 「ある意味では、台本の副産物とも言えます」と認めつつも、「でもその一方で、台本の話じゃないなと感じることもあります。根底には危険な雰囲気が流れていて、そういう環境の雰囲気が恐ろしくなりました」。 その元作家の話では、女性に対する男性作家の口ぶりや扱いぶりから、自分が「モノ扱い」されているように感じたそうだ。そうした物言いはWWEスーパースターズの女性レスラーにも及んだ。「こんな下衆集団の中にはいられないと感じました」。 こうしたライタールームの有害な環境にもかかわらず、レオナルディ氏は「同じ穴で、クサい飯を食わされていた」者同士、ある程度は同胞意識を感じたこともあったそうだ。 「ビンスがいない時は、腹を割って話せるので最高でした」とレオナルディ氏は言い、「活気あふれる」雰囲気だったこともあると語った。「みな口を開き始めて、創造力がほとばしるんです。ビンスの影響力がどれほど大きかったか、彼の采配が実際は創作意欲を抑え込んでいたことが良く分かります」。