「不動産詐欺」で騙し取られた”6億円”の行方はまさかの…「カネの流れ」を通じて暴かれた「地面師」グループ同士の”繋がり”
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第42回 『格式ある「法律事務所」が「不動産詐欺」の現場へと一変...弁護士資格を剥奪され、地面師とタッグを組んだ「元弁護士」に「偽代理人」との関係性を問う』より続く
露わになった繋がり
手元にある諸永総合法律事務所の口座の残高・出入金明細によれば、15年9月10日、地道から振り込まれた土地代金6億5000万円は、その日のうちに、方々に振り分けられている。大所でいえば、オンライフへ3億9500万円、山口へ7000万円といった具合だ。山口の取り分は意外に少ない気もするが、諸永事務所の口座にも3600万円余りが振り込まれ、それが残ったままとなっていた。 この諸永事務所からの振り込み先の中で特筆すべき相手がいる。それが「フクダヒサト」への1億円だ。事件以来、地面師のことについて調べ上げてきた地道が、こう説明してくれた。 「これが15年暮れ、都内の駐車場の売買を装った2億5000万円の地面師詐欺で警視庁に逮捕された福田尚人と同姓同名なのです。逮捕された地面師は10人で、福田はそのうちの一人でした。要するに私の金が別の大掛かりな地面師組織へ流れていたことになる」 この駐車場をめぐる地面師詐欺が、第2章で書いた浜田山の事件だ。地面師界のスター、内田マイクが自ら乗り出し、あげくに逮捕された事件でもある。暴力団組織にたとえるなら、福田はその内田一派の若頭のような存在とされる。地面師グループの福田について、知らなかったのか、吉永に尋ねた。 「あれは売り主であるオンライフの指示で振り込んだだけですから、福田なんてまったく知りません。われわれは売り主の指示に従わなきゃいけないじゃないですか。それだけのことです。たしかに非常に奇怪な話です。でも、ほかにもなりすまし事件はいっぱい起きています。だからどこからどこまで犯人グループが一体なのか、その先はわからない」 富ヶ谷の土地の所有名義は、呉からオンライフを経由して地道へ移る手はずになっていた。オンライフを紹介したのも山口であり、両者はほぼ一体とみて間違いないだろう。
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