「不動産詐欺」で騙し取られた”6億円”の行方はまさかの…「カネの流れ」を通じて暴かれた「地面師」グループ同士の”繋がり”
平然と嘯く山口
そうして取材を続けていると、ひょんなところから、山口本人に連絡することができた。銀座の喫茶店で会った山口はこう答えた。 「呉さんは俺も紹介されて、会ったんだ。そうそう、呉さんの息子にも会った。本人確認のときには司法書士も同席していたしね。取引の前に、やめるならやめる、とはっきりしようとなったけど、みんなお金が欲しいから、『これで行っちゃいましょう』となっちゃったわけだよ。話が曲がって伝わってもよくないから、もうちょっと話が進んだらまた連絡くださいよ」 東京を跳梁跋扈する地面師集団は、さすがにつかみどころがない。 「この件は、福田が弁護士事務所にやってきて振り込みを指示したのです。福田が仕掛けを作った。首謀者でしょう」 当の山口は、私の取材にこう嘯いた。その山口は内田マイクのこともよく知っているという。 「俺は内田さんに2年半前に目黒の土地を紹介してもらって、それを埼玉の不動産屋の社長に買ってもらった。それがきっかけかな。2000万円だったか、いやもっとあったか、(買い手の)紹介料をもらった。けど、それから半年ぐらいしたら、その地主が偽者だったとわかったんだ。俺にしたら、『え~』っていう感じですよ。そのときに地面師という組織があると知ったんです」 もとより、山口の弁明を額面通りには受け取れない。まるで他人事のように言い訳している。しかし、台湾華僑を名乗るニセ地主を地道のところに連れてきたのが山口なのは動かしがたい。つまるところ、内田や福田、山口は、地面師仲間と言うほかない。富ヶ谷の事件でも、一脈通じてきたいわば同臭といえ、罪の擦り付け合いを始めているとしか思えなかった。さらに言えば、取引窓口となった諸永事務所にも同じ臭いがする。だが彼らも一枚岩ではない。 事件発覚後、被害者の地道たちは警視庁に刑事告訴するかたわら、民事でも弁護士の諸永を訴えた。すると、諸永総合法律事務所で暗躍してきたかつての親弁とイソ弁が仲たがいを始めたのである。 『なりすましの偽造パスポートは「中国語でありえない発音表記」「外国籍なのに和暦」...渋谷富ヶ谷の6.5億不動産詐欺を招いた弁護士の単純すぎるミスは「不注意」か「確信犯」か』へ続く
森 功(ジャーナリスト)
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