「心理的虐待を受けた経験を持つ」29歳女性が思う“献身的な母親像”への違和感…「そばに居続けることだけが愛ではない」
なぜ入院する息子の付き添いを断ったのか
――現在、ご子息は入院中であると伺いました。2024年4月に初めて体調を崩されて入院したとき、應武さんは付き添いを断り、結局、旦那さんが付き添いされたとか。その理由を教えていただけますでしょうか。 應武:当時、私は夫から「ついに卒乳もできたことだし、これまでずっと頑張ってきた分1週間くらいリフレッシュでもしてきたら」と提案され、旅先にいました。息子の不調の報せを受けて、急遽帰宅したんです。その病院は家族の誰かひとりが付き添えるシステムで、感染症対策のため、1度付き添ったら同じ人が2週間ずっといなければなりません。私は「母が私にしたように、私もまた息子に虐待をしてしまうのではないか」と恐怖しました。虐待は起きてからでは防げません。 夫は「息子視点で今一番そばにいて欲しいのは母親だと思うから、付き添ってあげてほしい」と言っていました。その気持ちもわかります。しかしそうした私の考えを夫に伝え、議論した結果、彼が息子に付き添うことで決着しました。彼からは「まりーちゃんに親らしさを求めることはもう諦めた方がいいのかな」と言われてしまいましたが。
ずっとそばに居続けることだけが愛ではない
――ご子息への思いはあるものの、ご自身の生育歴からくるトラウマなどを勘案した結果、付き添わない選択をしたわけですね。 應武:そうですね。虐待の多くは密室で起こります。虐待を防ぐため、具体的には、子どもとの一対一の空間で煮詰まったり親が精神的に追い込まれてしまう瞬間を少しでも減らすために子育てシェアハウスを立ち上げた経緯があります。子育てに向き合うなかで少しずつ恐怖が薄れている最中ではありましたが、どうしても2週間の付き添いは難しいと判断しました。後ろめたさはありましたが、親子関係を破綻させないために長い目で見てプラスの選択だったと思います。ずっとそばに居続けることだけが愛ではないと信じています。 ――今後、ご子息は医療的ケア児となります。シェアハウスの同居人はご子息の法律上の家族ではありませんが、これまでと同様に共同で育児をすることが可能なのでしょうか。 應武:息子の入院前までは、同居人には一緒に育児を担ってもらいました。放送では触れていませんが、我が家は家事や育児への協力の度合いによって、家賃や食費が割引されていく仕組みを導入しています。ただ違法性のない子育てシェアと違い、医療的ケアのシェアは難しい問題がありますよね。息子を在宅で診ることになった場合、家族以外の非医療従事者が痰の吸引、人工呼吸器の管理、経鼻栄養の管理などを担えるのかどうか、厚生労働省の資料を読み込んで検討しているところです。あるいは現行制度に合わせるならば、同居人にそれらの研修を受けてもらって、介護者として協力してもらう道もあり得るかもしれません。