2024年注目のWeb3新興企業5社:日本と世界で異なるリスクマネーの流れ
Questry(クエストリー):日本のお家芸「アニメ映画」制作の資金調達を変える
本社:東京千代田区CEO:伊部 智信(いべ・とものぶ)氏資金調達額:約1.5億円出資企業:Yamaha Music Entertainments、エンジェル投資家など クエストリーの経営を司るのは、ゴールドマン・サックスで10年以上勤務してきた伊部氏。2022年9月に代表の伊部氏とエンジニアらによって設立された。 「資本主義の世界では光が当たってこなかった人や、場所に光を当てられる仕組み」を作り出していくことをビジョンに据えている。金融とブロックチェーンの専門家が集まるクエストリーが注目されるようになったきっかけは、みずほ証券が7月に発表したユニークな取り組みだろう。 みずほ証券とクエストリーは、アニメ映画制作のための資金調達方法を大きく変えるため、一般の投資家が出資することのできる「コンテンツ・ファンド」を組成する。 発表文には、「将来、デジタル技術の活用や決済通貨の多様化を視野に入れている」とある。業界の中では、ファンド運営にブロックチェーンが利用され、世界的に注目されている「ファンドのトークン化」の動きが日本でも活発化していくとして、期待が高まっている。 日本のお家芸であるアニメ映画において、機関投資家などのプロ投資家だけでなく個人が投資できるファンドが存在するようになれば、潤沢な資金が世界を魅了するアニメ映画作りに流れ込んでいく可能性がある。また、発表文の中の「決済通貨の多様化」はさらに注目に値する。 従来、ファンド投資で使われてきた法定通貨に加えて、暗号資産やステーブルコイン、CBDC(中央銀行デジタル通貨)などのようなデジタル通貨・資産が利用されるようになれば、社会的・経済的インパクトは大きくなるだろう。
まじすけ:世界で人気の盆栽、トークンエコノミーで新たな価値をつくる
創業者:間地 悠輔(まじ・ゆうすけ)氏資金調達額:なし出資企業・投資家:なし採用しているブロックチェーン:アスターzkEVM(Astar zkEVM) 創業者の間地氏率いる「まじすけ」は、スタートアップが国内外で顧客ユーザーを増やすためのマーケティング事業を本業にしてきた。顧客企業でもある盆栽農家に対してマーケティング支援を行う中で、「BONSAI NFT CLUB」と名づけたプロジェクトを開始。盆栽の人気が世界的に高まるなか注目を集める存在だ。 盆栽の販売収益をエコシステムに組み込むことで、盆栽市場に連動させたトークンを流通させる。盆栽を求めて日本にやってくる海外の盆栽ファンや、日本国内の盆栽愛好家だけでなく、Web3ユーザーやアート市場に顧客層を広げることで、盆栽の市場規模の拡大を狙う。 BONSAI NFT CLUBでは、盆栽(現物)に紐づいたNFTが制作・販売される一方で、「BONSAICOIN(盆栽コイン)」というコミュニティトークンが存在する。提携している盆栽園と盆栽ショップの販売収益の一部を利用して、発行済みのBONSAICOINを市場から買い戻す(バーン)ことで、BONSAICOINの価値を一定水準に維持する計画だ。 BONSAICOINを軸とする経済圏では、トークンの流動性を高める取引を行う上位100人の参加者に対して、特典を付与するルールが設けられている。特定の条件を満たした参加者には、季節に合わせた盆栽が毎シーズン送られる仕組みだ。 ファンドなどの金融資産の一部をトークン化して個人投資家などに販売する手法は、「RWA(Real World Asset=現実資産)のトークン化」と呼ばれ、ブロックチェーンを活用するスタートアップに加えて、一部の金融機関が始めた。 ブロックチェーン上で取引されるオンチェーン市場では、従来の金融市場では取引されてこなかった資産がトークン化され、新たな市場を作ることが可能だ。盆栽トークン市場は今後どれだけ大きくなっていくだろうか。