速水もこみち×マセラティの“贅沢な時間”とは
軽井沢千住博美術館でアートに触れる
軽井沢千住博美術館の内部はガラスの面積が広く、自然光が入ることから照明なしでも明るく開放的な雰囲気だ。中庭や周囲には緑がふんだんに植えられており、もとの地形を活かして床には傾斜がついているから、美術館を見学しているというよりも、公園を散策しているように感じる。 これは、千住博と建築家の西沢立衛が話し合って構想したコンセプト。軽井沢の風土と、自然を対象とした作品が多い千住氏の作風にふさわしい美術館となっている。 「千住さんの人柄というか、しなやかでやわらかい表現が印象的です」という感想を速水が述べると、館内を案内する井出嘉幸セールスマネージャー兼事務長が理由を説明した。 「千住さんはアクリル絵具ではなく、岩絵具を使います。これだけ日光が入っても絵の色が変わらないのは、岩絵具で描いているからです」 これを聞いた速水は、「なるほど、僕はアクリルしか使わないのですが、参考になります」と、納得した表情を見せる。そして、「絵を描くのは大好きですけれど、顔料などにすごく詳しいわけではないので、こういった話を伺う機会は貴重です」と、続けた。 繊細なブルーのグラデーションで人気を集める『海と空』(2017年)、コロナ禍で沈み込んだ世界に希望を灯した『ウォーターフォール オン カラーズ』(2021年)、大地と向き合った『浅間山』(2023年)など、速水は千住作品を目に焼き付けるようにじっくりと、真摯な眼差しで見つめる。 作品だけでなく、千住が使う用具を展示するコーナーも、長い時間をかけて鑑賞していたのが印象的だった。そう伝えると、速水はこう答えた。 「以前、広告の仕事で、何度か中国に行きました。そのとき、船で川を下りながら中国の高名な先生に教わり、水墨画を描くという企画があったんです。烏龍茶の広告にも使われたという絶景の場所で、それをきっかけに、日本に戻ってからもしばらく続けていました」 軽井沢千住博美術館は、速水のクリエイティビティを刺激するのに格好の場所だったようだ。